「もう2年になりますね」通学路にはみ出した隣家の植木。何度訪ねても会えない家主に、町内会長が届けた一通
少しずつ道路へ伸びてきた枝
お隣の植木が気になり始めたのは、2年ほど前からでした。
最初は塀の上から少し枝が出ている程度でしたが、手入れされないまま少しずつ道路側へ伸びていきました。最近では、道の端を歩こうとすると枝をよけなければならないほどになっていました。
お隣は留守がちな家族で、平日も週末も車がない日が多く、越してきたときにあいさつを交わして以来、顔を見ることはほとんどありませんでした。
家の前は小学生の通学路です。朝になると、子どもたちは張り出した枝の手前で少し車道側へ寄って歩いていました。
ある朝、小さな子が枝をよけようとしたところへ車が近づいてきて、見ていた私は思わず身構えました。
その日の夕食中、妻も心配そうに言いました。
「今朝も、子どもたちが枝をよけて車道側を歩いてたわよ」
「会長さんも何度か訪ねてくれてるけど、なかなか会えないみたいなんだ」
町内会長さんは70代くらいの男性で、これまでにもお隣を訪ねてくれていました。しかし、いつ行っても留守だったそうです。
数日後、会長さんがうちへ来ました。道路へ張り出した枝を見ながら、困ったように言います。
「気になり始めて、もう2年になりますね。最近はだいぶ道まで出てきましたな」
少し考えてから、こう続けました。
「直接会えないなら、手紙を入れてみましょうか」
写真を添えて伝えた一通
翌朝、私と会長さんは道路側から、植木の枝がどこまで張り出しているのか分かるように写真を撮りました。
会長さんは便せんに、ここが子どもたちの通学路になっていることと、道路側へ伸びた枝を手入れしてほしいことを書きました。それに写真を添えて、お隣のポストへ入れました。
それから1週間後の土曜日、うちのチャイムが鳴りました。
玄関を開けると、50代くらいのお隣のご主人が、あの便せんと写真を持って立っていました。
「お手紙、読みました。道路側までこんなに伸びていたんですね。家をあけることが多くて、気づいていませんでした」
ご主人は写真に目を落とし、頭を下げました。
「子どもたちも通る道なのに、すみませんでした。次の週末に植木屋さんを頼みます」
私はそのあと会長さんの家へ行き、お隣のご主人が訪ねてきたことを伝えました。
「そうですか。それならよかった」
会長さんも、ほっとしたようにうなずきました。
道の端を歩けるようになった朝
約束どおり、次の週末には植木屋さんが来ました。塀を越えて道路側へ伸びていた枝はきれいに切りそろえられ、ご主人も軍手をはめて片づけをしていました。
作業が終わると、ご主人は私と会長さんに言いました。
「これからは年に2度、植木屋さんに来てもらいます。気になることがあったら、また教えてください」
月曜の朝、妻と門の前に立つと、子どもたちは枝をよけることなく、道の端を一列になって歩いていきました。
「これなら安心して歩けるわね」
道の向こうでは、見守りの旗を持った会長さんも、その様子を見ながら大きくうなずいていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














