「まだ1歳半よ、謝るほどのことじゃないでしょ」頭を打った息子の横で笑う母親に、職員が伝えた一言
息子が頭を打ったのに、笑っていた母親
長男が小さかったころ、私は子育て支援センターによく通っていました。
昼どきになると、マットが敷かれた部屋には数組の親子が集まります。
そこでよく顔を合わせていたのが、30代くらいの母親と、その娘でした。
娘は長男とほぼ同じころに生まれた子で、会えば自然と近くで遊ぶような仲でした。
ある日、長男が窓ぎわでボールを転がしていたときのことです。
突然、その娘が走ってきて、両手で長男を勢いよく押したのです。
長男はあおむけに倒れ、床にあったおもちゃの角に後頭部をぶつけました。
次の瞬間、大きな泣き声が部屋に響きました。
私は慌てて長男を抱き起こしました。後頭部をそっと触ると、小さなふくらみがあります。
「大丈夫? 痛かったね…」
心配で胸がいっぱいになっていると、棚の前で一部始終を見ていた母親が笑いながら言いました。
「あら、ドンしちゃった。仲よしだもんね」
その反応に、私は驚きました。
母親は娘の手を引いて近づくと、さらにこう続けたのです。
「子ども同士のことだもん。気にしないでね」
「でも、頭を打っていて…」
私がそう伝えると、母親は少し不満そうな顔になりました。
「まだ1歳半よ、謝るほどのことじゃないでしょ」
確かに、まだ小さな子どもです。悪気があって押したとは限りません。
でも、実際に長男は頭を打ち、こんなに泣いています。
せめて「大丈夫?」と心配してほしかったのです。
言い返したい気持ちもありましたが、今は長男のほうが心配で、それ以上言葉が出ませんでした。
一部始終を見ていた職員の言葉
そのとき、部屋のすみで見守っていた50代くらいの女性職員が、流しでぬらしたタオルを持ってきてくれました。
私のそばにしゃがみ、長男の頭を確認すると、ふくらんだところにそっとタオルを当ててくれました。
そして、母親のほうを向いて言いました。
「私も見ていました。お嬢さんが走ってきて、両手で押したんです。頭も打っていますからね」
母親は少し戸惑ったように答えました。
「でも、まだ小さいから…」
すると職員は、落ち着いた声で続けました。
「そうですね。まだ自分では、うまく謝れない年齢ですよね。でも、だからこそ、お母さんから一言あるといいと思いますよ」
母親は黙ってしまいました。
周りで遊んでいた親子も、何となくこちらに目を向けています。
しばらくして、母親は小さな声で言いました。
「……すみませんでした」
先ほどまでの笑顔は消えていました。
職員は今度は娘の前にしゃがみ、目線を合わせて優しく声をかけました。
「お友だちを押すと、痛いんだよ」
そのころには、長男もようやく泣きやんでいました。
母親はそれ以上何も言わず、荷物をまとめると、いつもより早く娘を連れて帰っていきました。
私が求めていたのは、大げさな謝罪ではありません。
小さな子ども同士のことだからこそ、けがをした相手を気遣う言葉があってもいいのではないか。
あのとき職員が落ち着いて伝えてくれた言葉は、今でも心に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














