「中がぐちゃぐちゃやないか!」たこ焼きを床に投げつけた男性客。店長が床のたこ焼きを拾って取った思わぬ行動
中がとろっとした評判のたこ焼き
大学生のころ、私は地元でよく知られたたこ焼き屋でアルバイトをしていました。
その店のたこ焼きは、外は香ばしく、中はとろっと柔らかいのが特徴です。
その食感を気に入って買いに来るお客さんも多くいました。
ある日の夕方、店にいたのは私と大学の先輩の2人だけでした。
鉄板でたこ焼きを焼いていると、60代くらいの男性がカウンターにやってきました。
男性に焼きたてのたこ焼きを渡すと、その場でひとつ口に入れました。
ところが、すぐに顔をしかめたのです。
「熱っ!なんやこれ。中、ぐちゃぐちゃやないか!」
男性は不満そうにたこ焼きをつつき始めました。
そして突然、たこ焼きを店内の床へ投げつけたのです。
「こんな生焼けのもん出して、どういうつもりや!」
私は驚いて手を止めました。
すると、隣にいた先輩がカウンターに近づき、落ち着いた声で説明しました。
「すみません。うちはこういうたこ焼きなんです。中がとろっとしているのが特徴で…」
しかし、男性は納得しません。
「そんなもん知らんわ!客にこんなん出すんか!」
先輩が説明しようとしても、男性の怒鳴り声に遮られてしまいます。
怒鳴り続ける男性と、駆けつけた店長
先輩はもう一度、男性に頭を下げました。
「申し訳ありません。でも、生焼けではないんです。ちゃんと焼けていて…」
「だから!中がぐちゃぐちゃや言うとるやろ!」
男性がカウンターをどんとたたきました。
「こっちは客やぞ!」
その勢いに、先輩も言葉を詰まらせてしまいました。
先輩の手が小さく震えているのが見え、私も怖くなってきました。
このままでは収まりそうにありません。
私は店の奥へ下がり、近所に住んでる店長に電話をかけました。
電話を終えて鉄板の前へ戻っても、男性はまだ先輩に向かって怒鳴っていました。
そのとき、入口の戸が開きました。
駆けつけた店長です。
店長はカウンターの外側へ回り、男性の前に立ちました。
そして、床に落ちていたたこ焼きをひとつ拾うと、なんとそのまま口に入れたのです。
「えっ…?」
私は思わず声を漏らしました。
床に落ちたものを食べるなんて、あまりにも突然のことで、何が起きたのか理解できませんでした。
男性も驚いたのか、それまでの怒鳴り声が止まりました。
店長はたこ焼きを飲み込むと、男性の顔をまっすぐ見て言いました。
「これが、うちのたこ焼きです」
低く、はっきりとした声でした。
男性は何か言い返そうとしたようでしたが、口の中でぶつぶつとつぶやくだけでした。
そして、それ以上文句を言うことなく、店を出ていったのです。
店長は何事もなかったように鉄板の前へ戻ってきました。
「さ、次、焼こか」
その一言に、先輩と私は顔を見合わせました。
床のたこ焼きを食べたことには驚きましたが、あれほど怒鳴っていた男性が黙ってしまったことも信じられません。
緊張が解けたせいか、2人とも思わず笑ってしまいました。
先輩は気持ちを切り替えるように、鉄板のたこ焼きをくるりと返しました。
あの店長の行動は、今でも忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














