「めっちゃ頑張ってるやん!」子どもの音読中に笑い合う家族。だが、会場の空気を変えた先生の静かな注意
前の列から聞こえる笑い声
子どもの小学校で、国語の音読の発表会があった日のことです。
私は体育館に並んだパイプ椅子の保護者席に座り、発表が始まるのを待っていました。
一つ前の列には、父親と母親、それに祖母らしい女性が座っていました。
母親と祖母らしい女性は、席に着いてからずっと顔を寄せ合っておしゃべりをしています。
父親は椅子を後ろにずらし、背もたれに寄りかかって足を前へ伸ばしていました。
そのせいで、私の足元はかなり窮屈になっていました。
少し迷いましたが、このままでは落ち着いて座れません。
「すみません。椅子がちょっと近くて、足が当たりそうなんですけど…」
思い切って声をかけると、父親は振り向きもせずに答えました。
「狭いんやから、しゃあないやん」
すると、母親までこちらを振り返りました。
「みんな狭いんやし、お互いさまやん」
そう言うと、母親は再び祖母らしい女性との話に戻ってしまいました。
これ以上言っても仕方がないと思い、私は膝を斜めにして座り直しました。
せっかく子どもの発表を楽しみに来たのに、始まる前から気が重くなっていました。
音読中も止まらないおしゃべり
やがて音読が始まり、子どもたちが順番に教科書を読み始めました。
ところが、前の家族のおしゃべりは止まりません。
「ほんで、こないだの話やけどな…」
「ちょっと、やめてえや。笑ってまうやん」
祖母らしい女性が何か話すたびに、母親が肩を揺らして笑っています。
声を抑えているつもりなのかもしれませんが、すぐ後ろにいる私には会話が聞こえていました。
何度も舞台に集中しようとしましたが、肝心の子どもたちの声が聞き取りづらくなっています。
やがて、前の家族の子どもの番になりました。
すると母親は、手をたたきながら声を上げました。
「わあ、めっちゃ頑張ってるやん!」
祖母らしい女性も笑顔になり、二人は顔を見合わせてまた笑い始めました。
子どもが頑張っている姿を見てうれしい気持ちは分かります。
でも、今はその子自身が音読をしている最中です。
周りの保護者たちも気になるようで、何人かが前の家族のほうを見ていました。
それでも、おしゃべりは続いていました。
先生がマイク越しに伝えた一言
次の子どもが音読を始める前のことです。
舞台の横にいた司会の先生が、マイクを手に取りました。
「保護者の皆さま、お子さんの声がよく聞こえるよう、ご協力をお願いします」
落ち着いた声でしたが、続く言葉ははっきりしていました。
「おしゃべりはお控えください」
先生は前の列のほうへ目を向けています。
近くの保護者たちも、前の家族に視線を向けました。
母親はそこでようやく口を閉じました。祖母らしい女性もうつむき、それまでの笑い声がぴたりと止まります。
父親も黙って足を引っ込め、体を起こして座り直しました。
さっきまで「お互いさまやん」と言っていた母親も、今度は何も言いませんでした。
その後、前の家族からおしゃべりが聞こえることはありませんでした。
体育館には子どもたちの音読がよく響くようになり、私もようやく舞台に集中できました。
そして、わが子の番が来たとき。
私はまっすぐ前を向き、その声を最後までしっかり聞き届けることができました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














