本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
「福袋返品」を迫る客
私は、都内のデパートで衣料品を扱う販売員をしています。
福袋の販売は私たち店員にとって一年の始まりを告げる一大イベントとなります。
開店から数時間後、一人の女性が、パンパンに膨らんだ福袋を持ってサービスカウンターにやってきました。
お客様は、見るからに不満そうな表情です。
「これ、返品したいんだけど」と、お客様は福袋をドンとカウンターに置きました。
私は笑顔で対応しましたが、中身が気に入らないという理由だとすぐに察しました。
「大変申し訳ございません。福袋は商品の特性上、原則として返品・交換はお受けできません」とマニュアル通りの説明を繰り返します。
しかし、お客様は納得しません。
私は冷静に、「福袋は価格以上の商品をお得に提供するもので、中身は開けるまでのお楽しみ、という特性をご理解の上でのご購入をお願いしております」と再度丁寧にお伝えしました。
しかし、お客様は「知らなかった」「聞いてない」の一点張りです。
場の空気を変えた一言
お客様が「とにかく気に入らないものはゴミよ!」とさらに声を荒げたとき、私はこれ以上マニュアル通りの言葉を繰り返しても、お客様の感情を刺激するだけだと思い、伝え方を変えてみることにしました。
「お客様。お気持ちはわかりますが、福袋を一度開け、中身を確認し、気に入らないからと返品を求められる行為は、『福を試してから、気に入らないものは拒否する』という身勝手な行為です」
この一言で、彼女の顔はみるみる赤くなり、さっきまでの勢いは消え失せてしまいました。
「福袋は、その名の通り、年の初めに『福を掴む』という縁起物です。中身が気に入るかどうかも含めて、この一年の運試しとして楽しんでいただくものだと存じます」
お客様は、福袋を乱暴に掴むと、「もういいわ!」とだけ言って、足早にデパートを後にされました。
その顔には、自分がしていた行為の浅ましさに気づいた羞恥心が見て取れました。
福袋を売ることは、ただ商品を売るだけでなく、お客様に一年の「ワクワク」を提供する仕事だと、改めて実感した出来事でした。
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