響き渡る怒鳴り声
仕事帰りのスーパー、時刻は午後7時。
疲れ切った体にムチを打ち、明日の朝食用のパンと牛乳をカゴに入れてレジへと並びます。
夕飯どきの店内は戦場のような忙しさ。
私の並んだ列も、5、6人が順番を待つ長蛇の列となっていました。
ようやく次が自分の番、というところで目の前の男性の怒鳴り声が響きます。
「おい、店員! ぼったくる気かよ!」
カゴに入れたイチゴのパックを指差し、レジの女性店員さんに詰め寄っています。
「これ、売り場には『398円』って書いてあったぞ! なんでレジを通すと『598円』になるんだ。客をバカにしてんのか!」
あまりの剣幕に、周囲の客も「何事か」と足を止め、現場は一気に不穏な空気に。
店員さんは一瞬驚いた表情を見せましたが、すぐに冷静さを取り戻し、男性の持つイチゴをスッと確認。
「……失礼いたしました。お客様、恐れ入りますが、あちらの売り場までご案内してもよろしいでしょうか?」
店員さんは、怒鳴る男性を急かすことなく、それでいて毅然とした足取りで青果コーナーへと向かいました。
私も気になって、つい視線で後を追ってしまいます。
「ほら見ろ、ここに398円ってデカデカと書いてあるだろ!」
売り場に着くなり、勝ち誇ったようにプライスカードを指差す男性。
しかし、店員さんはニコリともせず、静かに隣の棚を指差しました。
店員の丁寧な対応
「お客様、大変申し訳ございませんが、そちらの『398円』はお隣にある『◯◯県産のイチゴ』の価格でございます。お客様がカゴに入れられたのは、こちらの『特大粒のブランドイチゴ』ですね」
「……え?」
「パックの形が似ておりますが、品種も大きさも全く異なります。お客様がお持ちのものは、こちらの棚にある通り『598円』が正解でございますが……いかがなさいますか?」
男性が指差していた場所から、わずか数十センチ。
そこには確かに、全く別の商品の値札が。
自分の完全な「確認不足」と「勘違い」を突きつけられた男性。
先ほどまでの威勢はどこへやら、顔を真っ赤にしてフリーズしています。
「あ、いや、それは……」
「もしよろしければ、こちらの398円のものとお取り替えいたしましょうか?」
店員さんの、完璧すぎるほどの事務的かつ丁寧な提案。
それが逆に、男性の恥ずかしさを増幅させているようでした。
結局、男性は「……いいよ、これで」と蚊の鳴くような声でつぶやき、逃げるようにレジを済ませて店を去って行きました。
一部始終を見ていた私は、心の中でガッツポーズ。
理不尽な怒鳴り声に動じず、圧倒的な事実でスマートに撃退した店員さん。
その背中があまりにかっこよく、帰り道の足取りが驚くほど軽くなったのを覚えています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














