tend Editorial Team

2026.06.29(Mon)

親族「あなたどちら様でしたっけ」40人の大所帯に嫁いで給仕係扱い→義妹の夫の一言で座敷が静まり返った通夜

親族「あなたどちら様でしたっけ」40人の大所帯に嫁いで給仕係扱い→義妹の夫の一言で座敷が静まり返った通夜

四十人の大所帯

結婚するとき、夫の家の大きさに驚かされた。いとこだけで約四十人。

挨拶に伺える親族を絞らないと、収拾がつかないほどだった。

その義父が亡くなり、通夜には数えきれないほどの親族が集まった。

私にとっても、義妹の夫にとっても、半分以上が初対面だ。

「ごめんなさい、あなたどちら様でしたっけ」

廊下ですれ違った年配の親族に、そう尋ねられた。

名乗っても、ああそう、と興味なさそうに座敷へ戻っていく。

給仕係の私

座敷では、親族たちが思い思いに話し込んでいた。けれど、その輪に私の入る隙間はどこにもない。

「お茶のおかわり、お持ちしますね」

私にできることといえば、湯呑みを満たして回ることくらいだった。

お盆を抱えて台所と座敷を何往復もするうちに、誰の顔も覚えられないまま夜が更けていく。

視線を上げると、義妹の夫も壁際に立ち尽くしている。気まずそうに、手持ち無沙汰に。彼も時折、出された座布団に浅く腰かけては、すぐにまた立ち上がっていた。

座っていても、声をかけてくれる人がいないからだ。

「お子さんは何年生?」

そんな一言すら、誰からも飛んでこない。自分の親族の席なら、連れ合いにも必ず声をかける。

誰かに紹介し、輪に入れてやる。それが普通だと、私は信じていた。

(この人たちには、私たちが見えていないみたい)

冷たいのか、無関心なのか。どちらにせよ、居場所はなかった。私はまた、空になった急須を持って立ち上がった。

救われた一言

通夜の喧騒がようやく落ち着いた頃、義妹の夫が座敷の中央に立った。彼は親族たちを見渡し、はっきりとした声で言った。

「皆さん自分の話だけで会話が成立、凄いですね」

潮が引くように、座敷の話し声が消えた。最初に笑っていた年配の男が真顔になり、次に隣の女性が気まずそうに目を伏せる。

最後には誰もが、決まり悪そうに黙り込んでいた。

「この人なんて、誰にも名前を聞かれないまま、ずっとお茶を運んでいたんですよ」

すると奥のほうから、「……ほんとね、私たちったら身内だけで」という声がした。

ばつが悪そうにうなずく人が、ぽつぽつと増えていく。さっきまで私の存在に気づきもしなかった人たちが、急に居住まいを正していた。

「いえ、どうかお気になさらず」

私は空の急須を抱えたまま、背筋を伸ばして言った。もう曖昧に笑ってやり過ごす気はなかった。

言うべきことを誰かが言ってくれた。それで十分だった。

あの日を境に、法事で顔を合わせると、親族たちのほうから先に頭を下げてくるようになった。

気まずそうに目を泳がせる彼らを見るたび、私と義妹の夫は、そっと目配せを交わして口元をゆるめた。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.05(Mon)

「えー、かわいい!これ着る!」買い物に失敗したと思った母。数年後、娘を見て笑った理由
tend Editorial Team

NEW 2026.10.05(Mon)

「昨日のは、なんていう曲?」隣のお風呂の歌声を気にしていた私。だが、ママ友の一言で固まった理由
tend Editorial Team

NEW 2026.10.05(Mon)

「Mなら余裕だよ」とサイズ表を見なかった私。だが、届いたジャケットを長男が着て分かった勘違い
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.04.06(Mon)

「国は現実が見えてない」「この制度はやっぱしやりすぎ!」と共感の声相次ぐ。カズレーザーが自転車「青切符」制度の課題を指摘
tend Editorial Team

2025.12.04(Thu)

「子供が触っただけよ」と壊した商品の弁償を拒む母親。しかし、店長の正論で顔色が一変【短編小説】
tend Editorial Team

2025.11.03(Mon)

「タイトル釣りかと思ったら本当に大切な報告だった。」かまいたち山内が妻と“まさか”の私生活暴露でファンほっこり
tend Editorial Team