「その荷物、膝の上に置けますか?」混雑した電車で座席をふさいでいた男性。だが、高齢女性を見た乗客の一言
混んだ車内で、荷物が座席をふさいでいた
その朝の電車は、いつもより混んでいました。私は連結部に近い場所で立ち、揺れるたびに手すりを握り直していました。
何気なく座席のほうを見ると、一人の男性がスマートフォンを見ています。その隣の座席には、大きなリュックが置かれていました。
乗ったばかりのころは空いていたのかもしれません。ただ、そのときの車内には立っている人が何人もいて、リュックが1人分の席をそのまま占めている状態でした。
さらに気になったのが、その座席の前に立っていた高齢の女性です。
白髪を後ろでまとめ、小さなかばんを両手で抱えていました。電車が減速するたびに身体がふらつき、手すりを握り直しています。
近くにいた人が心配そうに声をかけました。
「大丈夫ですか?」
女性は少し笑って、
「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
と答えました。
本人がそう言うなら余計なことをしないほうがいいのかもしれない。そう思う一方で、私はどうしても隣の座席に置かれたリュックが気になりました。
立っていた女性が、静かに声をかけた
私と同じように気になっていた人がいたようです。
ドアの近くに立っていた三十代くらいの女性が、男性のそばまで行きました。そして、責めるような口調ではなく、静かに声をかけたのです。
「すみません。その荷物、膝の上に置けますか?こちらの方が座れそうなので」
男性はそこで初めて顔を上げました。
周囲を見回してから高齢の女性に目を向け、自分の隣に置いていたリュックを見ます。
「あ……すみません」
男性はすぐにリュックを持ち上げ、膝の上へ移しました。
それまで隠れていた座面が現れると、声をかけた女性が高齢の女性を振り返ります。
「ここ、座れますよ」
「まあ、ありがとうございます。助かります」
高齢の女性はそう言って腰を下ろし、声をかけてくれた女性と男性の両方に小さく頭を下げました。
男性も少し気まずそうな顔をしながら、「気づかなくて、すみません」と答えていました。
大きな注意や言い争いがあったわけではありません。ただ、目の前の状況を見て静かに声をかけた一言で、一つの席が本来の使われ方に戻りました。
自分も気になっていたのに声を出せなかっただけに、その女性の落ち着いた言い方が今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














