「そのスカート、短くない?」駅までの道で服に口を出す女性。服選びまで嫌になった私に、母が動いた
通るたびに服のことを言われるようになった
学生だったころ、私は授業のある週5日、毎朝同じ道を通って駅へ向かっていた。
途中には小さな店が一軒あり、朝になると60代くらいの女性が店先を掃いていた。最初のころは、顔を合わせれば天気の話をするくらいだった。
ところが、ある朝から話題が私の服に変わった。
「そのスカート、ちょっと短くない?」
「え、そうですか?」
「そんな格好で出歩かない方がいいよ」
私が曖昧に笑って通り過ぎようとすると、背中にもう一度、同じ言葉が飛んでくる。いつの間にか、店の前を通るたびに2度言われるのが当たり前になっていた。
心配してくれているのかもしれない。そう思って最初は受け流していた。
けれど、だんだん朝の服選びまで気が重くなった。気に入って買ったスカートを手に取っても、「また何か言われるかな」と考えて、棚に戻すこともあった。
ある朝、また同じように声をかけられ、私は思い切って足を止めた。
「この服、自分で選んで気に入ってるんです。じゃあ、行ってきます」
女性は少し驚いたように私を見たが、何も言わなかった。私はそのまま駅へ向かったものの、改札を抜けるころまで心臓が落ち着かなかった。
母が店で伝えた言葉
その夜、夕飯のあとで母に話した。
「最近、あのお店の人に服のことを言われるんだ」
「どんなこと?」
「『そんな格好で出歩かない方がいい』って。通るたびに言われるの」
「毎朝?」
「授業がある日はね」
母は少し考えてから言った。
「そう。じゃあ明日、買い物ついでに寄ってくるよ」
「言い合いにならない?」
「大丈夫。本当のことを伝えるだけだから」
翌日の昼、母は買い物の途中であの店に立ち寄った。
帰宅した母から聞いた話では、牛乳とパンをレジに置き、会計のときに女性へこう伝えたという。
「娘は、自分の好きな服を着て毎日元気に出かけています。心配してくださって、ありがとうございます」
女性はお釣りを渡しかけた手を止め、母の顔を見た。何か言おうとしたあと、視線をレジに落としたという。
「……そう」
そのとき店の奥から出てきたご主人も、母に黙って会釈をしたそうだ。
「ちゃんと伝わったと思うよ」
母はそれだけ言って、買ってきた牛乳を冷蔵庫にしまった。
翌朝、私はお気に入りのスカートで家を出た。店の前で、ほうきを持った女性と目が合った。
「行ってらっしゃい」
返ってきたのは、その一言だけだった。
それ以来、服のことを言われることは一度もなかった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














