「断ると角が立つしなあ」開封済みのおすそわけに困る近所の人たち。数日後、僕が玄関先で返した言葉
集積所で知った、近所の困りごと
月曜の朝、ゴミ袋を集積所に置くと、向かいの奥さんと斜め向かいのご主人が小声で話していました。僕に気づくと、奥さんが手招きをします。
「お隣のおばあちゃん、お宅にも来るでしょう。昨日は何をもらったの?」
「開封済みのお菓子で、賞味期限は今日までだったよ」
「うちも。袋が輪ゴムで留めてあって、どうしようかと思って」
隣のおばあさんは80代くらいで、ひとり暮らしです。道で会えば明るく声をかけてくれる人で、食べきれなかったものを近所に分けてくれることがありました。
ただ、すでに開けてある食品となると、衛生面が気になります。好意だと分かっているだけに、みんな断りづらかったようです。
「断ると角が立つしなあ。最近は、姿が見えたら遠回りしてるよ」
ご主人がそう言うと、奥さんも困ったようにうなずきました。僕の家でも、受け取るのはこれで2度目です。
その夜、夕飯を食べながら妻に集積所での話をしました。台所には、前日にもらった袋が口を留めたまま置いてあります。
「みんな困ってるのに、言いづらいんだね」
「次に来たら、僕から話してみるよ」
妻は少し考えて、「それなら、今度お茶に誘ってみたら?」と言いました。週末にお菓子を焼くつもりだったそうです。
玄関先で伝えた、断る理由
数日後の夕方、チャイムが鳴りました。玄関を開けると、おばあさんが口の開いたお菓子の袋を両手で持っています。
「おすそわけ。若い人はたくさん食べるでしょう」
僕は袋に手を伸ばさず、できるだけ普段どおりの口調で伝えました。
「いつもありがとうございます。でも、開けてあるものは、うちでは受け取れないんです」
おばあさんは一瞬黙り、手元の袋に目を落としました。
そこで、続けて言いました。
「その代わり、今度うちでお茶をどうですか。妻がお菓子を焼くので、よかったら一緒に」
少し間があってから、おばあさんは袋を手提げにしまいました。
「……そうね。開けたのは失礼だったわね」
その週末、おばあさんは約束の時間ぴったりにやって来ました。妻の焼いたクッキーを食べると、うれしそうに笑います。
「おいしい。こういうのは、焼きたてがいちばんね」
それから、少なくとも僕の家に開封済みの食品が届くことはなくなりました。
次の月曜、集積所では、おばあさんが向かいの奥さんと斜め向かいのご主人と話していました。奥さんは僕に気づくと、そっと耳打ちします。
「助かったわ。今度は私もお茶に呼ばれてるの」
断ることで気まずくなるのが心配でしたが、伝え方を選べば、関係を切らずに気持ちを伝えられることもあるのだと感じた出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














