「すごいね。あれ、全部食べるのかな」ホテルの朝食会場で大量に取っていた家族。だが、帰りに見た悲しい光景とは
列の前で重なっていく皿
数年前の夏休み、夫と小学生の息子を連れてホテルに連泊したときのことです。初日の朝、朝食会場は家族連れでにぎわっていました。
パンの台に並ぶと、前にいた40代くらいの父親が大皿を2枚持っていました。1枚にはウインナーや唐揚げが山になり、もう1枚にはロールパンやクロワッサンが次々と重なっていきます。
「すごいね。あれ、全部食べるのかな」
息子が小声で言ったので、私は慌ててその手を下ろしました。
「こら、指ささないの」
父親はそのままフルーツの台へ移り、メロンやぶどうもたっぷり盛って、家族の待つ席へ戻っていきました。少し離れたところでも、別の家族がトレーいっぱいにパンを取っています。
席に着いてから、私は夫に小声で話しました。
「さっきの家族だけじゃなかったよ。向こうもパンを山ほど取ってた」
夫は料理の台を見ながら、「旅行だと、つい多めに取っちゃうのかもな」と答えました。
ところが食事を終えて会場を出るころ、先ほどの家族が座っていた窓際のテーブルには、ロールパンやメロンがいくつも残っていました。
係の女性が、残った料理の皿を静かに重ねていました。
翌朝、料理の台に増えていた札
翌朝、朝食会場へ行くと、入口と料理の台のそばに前日にはなかった案内が置かれていました。
「お料理は何度でもお取りいただけます。食べきれる分だけ、少しずつお取りください」
息子も気づいたようで、「昨日はなかったよね」と札を見上げています。
そこへ、前日の父親が再び大皿を持ってやってきました。唐揚げを何個も取ろうとしたところで、パンのかごを抱えた係の女性が近づきました。
「お料理は何度でもお取りいただけますので、食べきれる分だけ少しずつお願いします。パンもまたすぐ焼き上がりますよ」
責めるような言い方ではありませんでした。
父親はトングを持ったまま少し止まり、料理の台の札に目をやりました。
「……じゃあ、あとでまた取りに来るか」
そう言うと、すでに皿に取っていた分で手を止め、そのまま席へ戻っていきました。
空いた皿を持って戻ってきた父親
しばらくすると、父親は空になった皿を手に、もう一度パンの台へ来ていました。前日のように一度に山盛りにするのではなく、焼きたてのパンをいくつか取って席へ戻っていきます。
息子もその朝はパンの台へ2度行き、そのたびにクロワッサンを1つずつ持ってきました。
「まだあったかい。ちょっとずつのほうがおいしいね」
空いた皿を下げに来た係の女性が、息子に笑いかけました。
「またすぐ焼き上がりますよ。いつでもどうぞ」
たくさん取らなくても、食べ終わってからまた取りに行けばいい。息子にとっても、それが自然に伝わった朝になりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














