夜11時すぎの「バタン!」という車のドアを閉める音で起こされる。しかし、勇気を出して朝の駐車場で事情を伝えると
夜11時すぎ、窓の外から響く音
僕は20代で、一戸建てが並ぶ静かな住宅地のアパートに一人で住んでいる。
寝室の窓のすぐ外には、ブロック塀を挟んで右隣の家の駐車場がある。家賃のわりに静かで、住み始めたころは当たりの部屋だと思っていた。
ところが、気になる音がひとつだけあった。
夜11時すぎになると、隣の家の男性が車で帰ってきて、ドアを「バタン!」と大きな音を立てて閉めるのだ。
40代くらいで、朝に顔を合わせればにこやかに会釈をしてくれる人だった。
眠りかけたところで音が響くと、びくっとして目が覚める。
気になってカレンダーに印をつけてみると、週に4回ほど同じことが続いていた。
休日、学生時代の友人から電話がかかってきたとき、ついその話をした。
「最近さ、隣の車のドアの音で起きちゃうんだよ。週に4回くらい」
「そんなに?でも、向こうもわざとじゃないんだろ?」
「たぶんね。でも寝不足になると、さすがにきつくて」
「それなら、一回普通に話してみたら?」
電話を切ったあとも、すぐに声をかける勇気は出なかった。それでも夜11時が近づくと、また音がするのではないかと身構える自分がいた。
責めるのではなく、困っていることを伝えた朝
次の日曜の朝、窓の外から水の音が聞こえた。見ると、隣の男性が駐車場で車を拭いていた。
今なら落ち着いて話せるかもしれない。そう思い、僕は外へ出た。
「朝からすみません。ちょっとだけいいですか」
「うん。どうした?」
「夜11時すぎのドアの音で、目が覚めるんです。僕の寝室が、ちょうど駐車場のすぐ横で…」
男性は驚いたように僕の部屋の窓を見上げ、それから車のドアに目を戻した。
「そんなに響いてたんだ。全然気づいてなかった。ごめんね。疲れて帰ると、つい勢いで閉めちゃってたよ」
「いえ。少し気をつけてもらえたら助かります」
「分かった。これから気をつけるよ」
男性が頭を下げたので、僕も「ありがとうございます」と頭を下げた。ほんの数分の会話だったが、部屋へ戻ると緊張がほどけたのか、ひざに少し力が入らなかった。
その夜、11時すぎに車が止まる音がした。
反射的に身構えたが、聞こえてきたのは「カチャ」という小さな音だけだった。窓からそっと見ると、男性が片手でドアを押さえながら、ゆっくり閉めていた。
数日後、ゴミ出しの朝に顔を合わせると、男性のほうから声をかけてきた。
「この前の話、うちの奥さんにもしたんだ。そしたら『私も大きいと思ってたよ』って言われてさ」
そう言って男性は少し苦笑いした。ちょうど玄関から出てきた奥さんも、こちらに小さく手を振ってくれた。
それからは夜遅くに大きな音で起こされることもなくなった。言いにくいことではあったけれど、相手を責めるのではなく、困っていることをそのまま伝えてよかったと思っている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














