「家庭がうまくいってないって聞いた」気の毒そうな目を向けられた私。だが、身に覚えのない噂の発信元を確認した結果
尾ひれがついた残業の話
娘の保育園のお迎えで、よく顔を合わせるママ友がいました。よその家の話をよく知っていて、人に話すときはいつも楽しそうな人でした。
ある夕方、仕事で遅れて迎えに行くと、そのママ友が声をかけてきました。
「今日、遅かったね。仕事忙しいの?」
「うん。最近ちょっと残業が多くて」
私が話したのは、それだけです。
ところが数日後、いつも穏やかなママから、声をひそめて聞かれました。
「大丈夫?おうちのこと、うまくいってないって聞いて…」
「え?そんなことないよ」
思わず聞き返しました。ほかのママからも気の毒そうな目を向けられるようになり、私が話した残業のことが、別の話になって広がっているようでした。
それから私は、そのママ友とは天気や保育園の行事くらいしか話さなくなりました。
すると、ほかの母親がいるときに限って、彼女は不思議そうに首をかしげるようになったのです。
4人がそろった夕方の門で
ある夕方、お迎えを終えた母親4人が門の前で話していました。
端からそのママ友、以前私を心配してくれた穏やかなママ、30代後半くらいのはっきりものを言うママ、そして私です。
子どもたちは脇の花壇で虫を探していました。
するとママ友が、私のほうへ少し身を乗り出しました。
「最近、あんまり話してくれないね。やっぱり、おうち大変なの?」
「別に、何もないよ」
「でも残業ばっかりなんでしょ?ねえ、みんなも心配してたよね」
話を振られた2人は、気まずそうに黙りました。
私は少し間を置いてから答えました。
「心配しなくて大丈夫。私が話したのは、最近残業が多いってことだけだから」
そして続けました。
「それが『家庭がうまくいってない』って話になってたから、あまり話さないようにしてたの」
ママ友の表情が止まりました。
すると隣にいた、はっきりものを言うママがママ友に人さし指を向けました。
「でも先週、あなた私に言ったよね」
ママ友が黙ったまま、その人を見ます。
「『家庭がうまくいってないって聞いた』って。あれ、誰から聞いたの?」
穏やかなママも、小さくうなずきました。
「私も同じこと聞いたよ」
週3回という回数も、家庭の話も、私は一度も口にしていません。
ママ友は顔を赤くして、片手をのどもとに当てました。
「……そんなつもりじゃなかったんだけど」
それ以上は何も言わず、花壇にいた子どもを呼ぶと、手を引いて早足で帰っていきました。私たち3人も、しばらく何も言えずにその背中を見送りました。
それ以降、少なくとも私の前では、ママ友がうわさ話を始めても以前のように話が広がることはなくなりました。
翌日、門の前で顔を合わせた私は、いつも通り空を見上げて言いました。
「明日は雨みたいね」
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














