「シンクは完璧に磨いた」とドヤ顔する夫。だが、妻が見た呆れた光景とは
「完璧に磨いた」の中身
その日は夫の在宅勤務日だった。仕事を終えて私が帰宅すると、夫がキッチンから顔を出して、得意げに言った。
「シンクは完璧に磨いた」
共働きで家事は分担のはずなのに、夫が自分から掃除をするのは本当に珍しい。
日ごろ「手が空いたらやる」と言うばかりで、その手が空いた場面を私はほとんど見たことがなかった。だからこそ、その一言には少しだけ胸が弾んだ。
私は驚いて、思わず台所をのぞきに行った。今日は洗い物をしなくて済むかもしれない。そんな淡い期待を抱えながら。
なるほど、シンクは見違えるほど輝いていた。
水垢もぬめりもきれいに落ちて、蛇口までぴかぴかだ。だが、その隣が問題だった。コンロの天板には、炒め物の油が茶色く飛び散ったまま。シンクの脇には、水を張ったフライパンと鍋が、いくつも重ねて放置されている。
「コンロの油は?」
私が尋ねると、夫はあっさりと胸を張った。
「そこはやってない。シンクを洗っただけ。やってあげたんだから、文句言うなよ」
子どもの一言で
ちょうどそのとき、宿題をしていた小学生の息子が、台所をのぞきに来た。そして、こてんと首をかしげて言った。
「パパ、まだベタベタだよ。ここ、汚れてる」
小さな指がさすのは、油まみれのコンロだった。夫の得意げな顔が、みるみるこわばっていく。
「いや、これは…」
言い訳の語尾が、尻すぼみに消えていった。息子はきょとんとしたまま、追い打ちのように続けた。
「ママはいつも、コンロもピカピカにしてるよ」
夫は、ぐっと言葉を失った。私は笑いをこらえながら、洗剤とスポンジを差し出す。
「せっかくだから、完璧にしちゃお」
夫は観念したように受け取り、コンロの油をこすり始めた。こびりついた汚れはなかなか落ちず、何度も同じ場所をこすっている。
鍋を洗い、フライパンを磨き、換気扇の下でしばらく黙り込んだまま手を動かし続けた。思ったより手間がかかることに、ようやく気づいたらしい。
「……これ、けっこう大変なんだな」
「毎日やってるからね」
その日以来、夫の「やっといた」の中身は、少しずつ本物になっていった。ピカピカの基準が、我が家でようやくそろった気がしている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














