「今日は明るいうちに帰るから」昼飲みなら安心だと思った私。だが、電車の窓から見た知らない景色
昼なら大丈夫だと思っていた
定年退職して1年ほどたったころ、昔の同僚から「昼に飲まないか」と誘われました。
60代になった私には、夜の飲み会に少し苦い思い出があります。
会社員だったころ、酒を飲んだ帰りに反対方向の電車へ乗ってしまったことが何度かあったのです。
出かける前、台所にいた妻に予定を伝えました。
「昼の2時から飲めば、電車の心配はいらない」
妻は振り返って、少しあきれたように言いました。
「そのセリフ、前にも聞いた気がするけど」
以前、終電で反対方向へ乗ってしまい、気づいたころには自宅方面へ戻る電車が終わっていたことがありました。
降りた駅ではタクシーも見つからず、10キロ以上の道を歩いて、明け方にようやく家へ着いたこともあります。
「今日は夜じゃないって。明るいうちに帰ってくるから」
「はいはい。気をつけてね」
今度こそ大丈夫だと、私は妙に自信を持って家を出ました。
窓の外を見て、嫌な記憶がよみがえった
昼の店では、昔の同僚と仕事の思い出話に花が咲きました。楽しい時間でしたが、夕方になる前には店を出て、改札の前で別れました。
「気をつけて帰れよ。昔みたいに歩くなよ」
「大丈夫、大丈夫。まだ昼だから」
ホームに入ってきた電車に乗り、空いていた座席へ腰を下ろしました。
窓から差し込む日ざしが心地よく、ほろ酔いのままぼんやり外を眺めます。
しばらくして、見覚えのない川が見えました。その先には、知らない畑が続いています。
「…あれ?」
私は座席で固まりました。
会社員だったころ、暗い窓の外を見ながら「しまった」と気づいた夜とまったく同じです。
また、反対方向の電車に乗っていました。
慌てて次の駅で降りました。以前なら、ここから帰る電車があるかと青ざめていたところです。
ところが向かいのホームを見ると、ほどなくして自宅方面へ向かう電車が入ってきました。
「……昼は、電車があるのか」
思わず、ひとりでつぶやいてしまいました。
夕方、無事に家へ着き、玄関で靴を脱ぎながら妻に一部始終を話しました。
「それで?電車の心配はいらなかったの?」
「ああ。電車はあった。問題は、俺が乗る向きだった」
妻は何も言わず、笑っていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














