「今日は、何が出てくるの?」義父が今でも笑って聞く理由。印鑑探しの途中で義母が見つけた思わぬ物
嫁いで最初の年、夫の実家での夕食
夫と結婚して最初の年の秋、夫の実家に招かれて夕食をごちそうになったときのことです。
居間の食卓には、私と夫、向かいに義父が座っていました。まだ義両親との食事には慣れておらず、「お義母さん」と呼ぶだけでも少し緊張していたのを覚えています。
その日の夕食は炊き込みご飯でした。
義母は台所でおかわりをよそってくれていたのですが、ふと冷蔵庫の横に立てかけてある回覧板に目を留めました。
「あっ、いけない!回覧板、まだはんこ押してなかったわ。お隣に回さなきゃ」
すると義父が、食卓から声をかけました。
「印鑑なら、いつもの引き出しじゃないのか?」
「そうよね。確かそこに入れたはずなんだけど……」
義母は台所の引き出しを開け、印鑑を探し始めました。
一段目を開けて、二段目を開けて、また一段目に戻って。なかなか見つからないようです。
「あれえ?おかしいわね。ここにあると思ったのに」
「お義母さん、私も探しましょうか?」
そう声をかけると、義母は笑いながら首を振りました。
「大丈夫、大丈夫。あなたは食べてて。すぐ見つかるから」
私が席に戻ると、隣の夫が小声で教えてくれました。
「あの引き出し、うちでは宝探しの場所なんだよ」
どうやら、いろいろな物が入っているようです。
台所からは、引き出しを開け閉めする音が聞こえ続けていました。
印鑑を探していた義母が掲げたもの
私がみそ汁を飲み終えたころ、ようやく台所の音が止まりました。
見つかったのかな、と思って顔を上げると、義母がこちらを振り返っています。
そして次の瞬間、右手を頭の上に高く掲げ、うれしそうに叫んだのです。
「もんじゃべら、あったー!」
義母の手には、小さな金属のへらが握られていました。
私も夫も義父も、一瞬ぽかんとしてしまいました。
最初に口を開いたのは夫です。
「……え?なんで今、もんじゃべら?」
義母は満面の笑みで、へらをこちらに見せています。
私は思わず笑いそうになりながら、声をかけました。
「お義母さん、探してたのは印鑑ですよね」
すると義母は、掲げていたへらを見つめ、ぱちぱちとまばたきをしました。
「……あら!そうだった!」
その瞬間、家族全員が吹き出しました。
義父は笑ってむせながら胸をたたき、夫は涙を拭いています。義母も自分でおかしくなったようで、へらを握ったまま笑い始めました。
つられて私も声を上げて笑ってしまいました。さっきまでの緊張が、どこかへ飛んでいったようでした。
ひとしきり笑ったあと、義母はまだうれしそうに言いました。
「でもね、これもずっと探してたのよ。印鑑より先に見つかっちゃったわ」
結局、印鑑は別の引き出しから無事に見つかりました。
そして翌週末には、家族でもんじゃ焼きの会が開かれました。義母は買い足した新しいへらを、一人ずつ誇らしげに配ってくれたのです。
今でも夫の実家で引き出しを開ける音がすると、義父がにやりと笑って言います。
「今日は、何が出てくるの?」
そのたびに私は、あの日の義母の得意そうな顔を思い出して、つい笑ってしまうのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














