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2026.07.19(Sun)

「飯はどうするの?俺は無理だぞ」何でも妻に任せた夫。だが、子どもの一言で初めて気づいた過ち

「飯はどうするの?俺は無理だぞ」何でも妻に任せた夫。だが、子どもの一言で初めて気づいた過ち

熱の出た朝に

結婚して20年。夫は外に出ると、家庭的な男になった。

「家では料理も手伝うし、家族は大事にしてるよ」

親戚にも同僚にも、そう話していたらしい。実際の夫は、食べた皿を流しに置きもしない。洗濯物は畳まれるのを待って、かごの中で眠っている。

参観日の帰り道、他の父親に「毎晩キッチンに立ってますよ」と話しているのを、私は少し後ろで聞いていた。

その夜の食器も、朝までそのまま食卓に残っていた。

ある冬の朝、私は熱で起き上がれなくなった。体は重く、天井がぐらぐらと揺れて見えた。

枕元に立った夫の第一声が、これだった。

「飯はどうするの?俺は無理だぞ」

耳を疑った。

「……今日は、自分で何とかして」

「そんなこと言われてもさ」

夫は不満そうに息を吐いて、部屋を出ていった。その日、枕元に水の一杯も置かれることはなかった。

20年を崩したひと言

子どもたちが家を出る準備を始めた、春のことだ。

荷造りの合間に、家族で朝食を囲んだ。積み上がった段ボールの隙間に、皿とパンを並べる。

娘が「この光景も最後だね」と笑った。

台所のほうからは、まだ湯気が上がっていた。誰が沸かした湯なのか、この家では聞くまでもない。

夫はいつもの調子で切り出した。

「父さんも料理は手伝ってきたんだぞ」

パンをかじっていた息子が、顔を上げた。

「え、お父さんが台所に立ってるとこ、見たことある?」

娘が首を振る。

「ない。お母さんしか記憶にないよ」

夫の手から、パンが落ちた。

「いや、手伝ってただろ。たまに」

「たまに、なんだ」

息子の相槌に、夫は口を開けたまま黙った。耳が赤くなり、視線がテーブルの木目をさまよう。20年ぶんの証人が、目の前に二人いた。

私は箸を置いて、言った。

「私が熱で寝てた朝、あなた、ご飯のことしか聞かなかったよ」

「……覚えてない」

「私は覚えてる」

娘が小さく「うわ」とつぶやいた。夫はコップに手を伸ばしかけて、途中で引っ込めた。言い返す言葉を探していたようだが、最後まで見つからなかったらしい。

その朝から、食卓の景色が少しずつ変わった。

まず、夫が自分の皿を流しに運ぶようになった。次に、スポンジを持つようになった。ゴミ袋の口を結ぶ手つきは、今もぎこちない。

「これ、燃えるゴミでいいのか」

「うん、それでいい」

それだけの会話が、20年目にして初めて交わされた。

子どもたちが巣立った家で、夫はもう「手伝ってきた」とは言わない。代わりに、黙って洗い物をしている。水音を聞きながら、私は思う。我慢しているだけでは、何ひとつ伝わらなかったのだと。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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