「くだらない、暇な人しか見ないだろ」テレビで笑っていた食卓を一瞬で凍らせた夫。だが、家族が離れて気づいたのは
一瞬で凍った食卓
子ども3人と食後にテレビの話で盛り上がるのが、わが家の恒例だった。皿を下げるのも忘れて、みんなでげらげら笑っている。
その夜も、食卓は賑やかだった。
「あの人、毎回同じところで転ぶよね」
中学生の娘がスマホを置いて笑い、小学生の息子が椅子の上で身をよじる。いちばん上の子まで、珍しく声を上げて笑っていた。
その輪の外から、夫が画面を見て言い放った。
「くだらない、暇な人しか見ないだろ」
笑い声が、途中で止まった。
それでも、末っ子はまだ諦めていなかった。父親の腕を引いて、画面の方へ向けようとする。
「これ面白いんだって。ちょっとだけ見て」
「そんなもん見て頭が良くなるのか?」
一瞬で、食卓が凍りついた。
誰も何も言わない。テレビの音だけが、空っぽの部屋みたいに響いていた。息子の手が、そっと夫の腕から離れる。
「……宿題、やってくる」
ひとり立ち、ふたり立ち。娘は風呂へ、上の子は自室へ。三人とも、あっという間に別室へ消えていった。私は残った皿を重ねて、台所へ引き上げた。
残されたのは夫だけ
食卓に残ったのは、夫ひとりだった。
スマホを片手に、誰も見ていないテレビの前で、動く気配もなく座っている。さっきまであんなに楽しかった部屋が、まるで待合室のようになっていた。
それから、家族の動線が変わった。
夫が居間にいる時間、子どもたちは降りてこない。麦茶を取りに来ても、コップを持ってすぐ自分の部屋へ戻る。夕食の会話も、夫が箸を置いた後にようやく始まるようになった。
半月ほど過ぎた夜、夫が落ち着かない様子で切り出した。
「なあ、最近この家、静かじゃないか」
そうだね、とだけ返す。
「みんな、俺のこと避けてるだろ」
私は洗い物の手を止め、振り返って言った。
「笑ってるところに来て、悪く言われたら、誰でも逃げるよ」
夫の顔から、みるみる血の気が引いた。
「そんな、大げさな」
「じゃあ聞くけど、あの子が腕を引いた時、なんて返した?」
言い返そうとして、夫は言葉に詰まった。しばらく口を動かしていたが、結局何も出てこないまま、うつむいて黙り込んだ。
次の週末、居間に子どもたちの笑い声が戻ってきた。
足音に気づいて、末っ子がびくりと肩を上げる。けれど夫は、黙って部屋の隅に座っただけだった。テレビの中でまた誰かが転ぶ。
「……今の、痛そうだな」
ぼそりとした感想に、息子が驚いた顔で振り向いた。
「でしょ?毎回そうなんだよ」
あの夜、家族全員に背を向けられて、この人はやっと学んだらしい。人を馬鹿にする言葉は、いちばん先に自分の居場所を削るのだと。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














