tend Editorial Team

2026.06.04(Thu)

「この列、私だけ進まない」支払いに手間取っている前の客→急いでないのに気まずく店を出た時の本音

「この列、私だけ進まない」支払いに手間取っている前の客→急いでないのに気まずく店を出た時の本音

横の列が、どんどん消えていく

昼休みに近所のスーパーへ立ち寄ったときのことだ。

昼どきで少し混んでいたが、レジには数列並んでいて、どれも短い。

急ぎの用事はなく、ランチ用の食材を2、3点持っていた。どこの列にしようかと眺めて、一番近い真ん中の列に並んだ。特に理由はなかった。

列に並んで少しすると、隣のレジがどんどん進んでいるのに気づいた。反対側も同じだ。

ところが自分の前の男性が、財布を触りながら支払い方法を迷い始めた。

「もう少々お待ちください」

担当の店員が端末を操作しながら、穏やかに声をかける。

丁寧な対応だ、とは思う。でも視界の端で、また別のレジが空いていく。

誰が悪いわけでもないのに

前の男性がスマホを取り出してキャッシュレス決済を試みる。

読み取り機にかざしてもエラーが出て、もう一度試みる。

「こちらの方法はいかがでしょうか」と店員が別の選択肢を提案する。

その声音は終始穏やかで、急かす様子もない。

丁寧な対応だと思う。でもそれが、かえってこの場の時間をゆっくりに感じさせる。

「この列、私だけ進まない」

口には出さず、胸の中だけでつぶやいた。

後ろにも人が並んでいる気配がする。振り向かなくても、自分の後ろに列ができているのが分かった。

急いでいないのに、なぜかこの場所に立ち続けることが居心地悪くなってきた。時計を確認すると昼休みはまだ残っている。それでも、体が勝手にそわそわし始める。

隣の列は、もう次の客が清算を終えていた。

別の列に移れる雰囲気ではないし、かといって誰かが悪いわけでも、自分がミスをしたわけでもない。ただ選んだ列が詰まっただけだ。

「お待たせしました」とレシートが出てきたのは、それから少し後だった。

「急いでません」という顔で出た、あの気まずさ

自分の番になると、精算はすぐ終わった。

「ありがとうございました」と店員に言い、袋を持って出口に向かう。

その歩き方が、なんとなく「ぜんぜん急いでませんでした」という空気を纏っているのが、自分でもわかった。なぜか堂々と歩けない。

損をしたわけでも、怒鳴られたわけでもない。

でも出口を抜けた後も、あの「詰まった列に選ばれてしまった感」だけがじんわり残った。

選んだのは自分だし、前にいた人も悪くない。それはわかっている。でもどうにも、この気持ちに名前がつけられない。

「もう少々お待ちください」

今も頭の中でそのセリフが再生される。誰も悪くないのに、どこにもぶつけられないモヤモヤの正体は、たぶんそこにある。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.07.24(Fri)

「席譲るとか偽善でしょ」席を譲った私に絡む男。だが、他の乗客の正論に黙り込んだ瞬間
tend Editorial Team

NEW 2026.07.24(Fri)

「静かにさせろ!」子供が遊んでいたら怒る住人。だが、管理会社に記録を見せた結果
tend Editorial Team

NEW 2026.07.24(Fri)

「深夜に音なんか出してないからな」町内会の集まりで否定する住人。だが、私が出したスマホで形勢逆転
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.07.15(Wed)

「保育園の準備なんて、5分で終わるだろ」実際に任された朝、鞄の前で立ち尽くした夫が漏らした一言
tend Editorial Team

2025.12.31(Wed)

「節約のために実家で暮らそう」と提案する彼。引っ越し初日に判明した、彼の秘密にドン引きした【短編小説】
tend Editorial Team

2026.07.02(Thu)

国旗損壊罪の棄権で波紋広がる!自民・岩屋毅前外相の退場に国民から『覚悟が足りない』『離党すべき』と批判の声が殺到した理由
tend Editorial Team