「この列、私だけ進まない」支払いに手間取っている前の客→急いでないのに気まずく店を出た時の本音
横の列が、どんどん消えていく
昼休みに近所のスーパーへ立ち寄ったときのことだ。
昼どきで少し混んでいたが、レジには数列並んでいて、どれも短い。
急ぎの用事はなく、ランチ用の食材を2、3点持っていた。どこの列にしようかと眺めて、一番近い真ん中の列に並んだ。特に理由はなかった。
列に並んで少しすると、隣のレジがどんどん進んでいるのに気づいた。反対側も同じだ。
ところが自分の前の男性が、財布を触りながら支払い方法を迷い始めた。
「もう少々お待ちください」
担当の店員が端末を操作しながら、穏やかに声をかける。
丁寧な対応だ、とは思う。でも視界の端で、また別のレジが空いていく。
誰が悪いわけでもないのに
前の男性がスマホを取り出してキャッシュレス決済を試みる。
読み取り機にかざしてもエラーが出て、もう一度試みる。
「こちらの方法はいかがでしょうか」と店員が別の選択肢を提案する。
その声音は終始穏やかで、急かす様子もない。
丁寧な対応だと思う。でもそれが、かえってこの場の時間をゆっくりに感じさせる。
「この列、私だけ進まない」
口には出さず、胸の中だけでつぶやいた。
後ろにも人が並んでいる気配がする。振り向かなくても、自分の後ろに列ができているのが分かった。
急いでいないのに、なぜかこの場所に立ち続けることが居心地悪くなってきた。時計を確認すると昼休みはまだ残っている。それでも、体が勝手にそわそわし始める。
隣の列は、もう次の客が清算を終えていた。
別の列に移れる雰囲気ではないし、かといって誰かが悪いわけでも、自分がミスをしたわけでもない。ただ選んだ列が詰まっただけだ。
「お待たせしました」とレシートが出てきたのは、それから少し後だった。
「急いでません」という顔で出た、あの気まずさ
自分の番になると、精算はすぐ終わった。
「ありがとうございました」と店員に言い、袋を持って出口に向かう。
その歩き方が、なんとなく「ぜんぜん急いでませんでした」という空気を纏っているのが、自分でもわかった。なぜか堂々と歩けない。
損をしたわけでも、怒鳴られたわけでもない。
でも出口を抜けた後も、あの「詰まった列に選ばれてしまった感」だけがじんわり残った。
選んだのは自分だし、前にいた人も悪くない。それはわかっている。でもどうにも、この気持ちに名前がつけられない。
「もう少々お待ちください」
今も頭の中でそのセリフが再生される。誰も悪くないのに、どこにもぶつけられないモヤモヤの正体は、たぶんそこにある。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














