「うちの洗濯機の使い方ね」家事のこだわりが強い夫。だが、夫が実際に洗濯機を回した結果
扉の下から届いた一枚の紙
夫が体調を崩し、寝室にこもって数日を過ごすことになった。
うつさないための隔離だと分かっていたから、私は家事を一手に引き受けた。
問題は、夫が“自分の担当”と決めていた洗濯だった。
熱で寝ているはずなのに、扉の向こうから細かい指示が次々と飛んでくる。
「コースは三番、柔軟剤は線ちょうどね」
ある朝、部屋の前に立つと、パソコンで作ったらしい書類がテーブルに置かれていた。
表題は、うちの洗濯機の使い方。
手順が一から十まで、番号を振って印刷されている。
「うちの洗濯機の使い方ね」
熱があってもこれだけは伝えたかったのか、と私はしばらく紙を眺めていた。
柔軟剤の量、コースの番号、干す向き。
そこに書かれたルールは、どれも夫だけのこだわりで、私にはどれが必要なのか見当もつかなかった。
それでも寝込む相手を責める気にはなれず、その週はマニュアルどおりに回し続けた。
担当をまるごと返した日
隔離が明けてリビングに現れた夫は、開口一番こう言った。
「マニュアル、ちゃんと見た?」
私は洗いたてのシャツを手渡して、静かに答えた。
「もう全部あなたにお任せ」
あなたの手順が正解なら、あなたがやるのが一番いい。
私では、あの十項目を完璧にはこなせないから。
そう言い添えると、夫はきょとんとした顔になった。
翌日から、洗濯は宣言どおり夫だけの仕事になった。
ところが本人がやってみると、自分で決めたルールが足かせになる。
仕分けに手間取り、干す順番に迷い、洗濯物は一向に片づかない。
休みの日が、洗濯機の前だけで半分終わっていく。
自分で作った第一項から第十項を、律儀に守ろうとするほど手が止まる。
タオルを先に、色物は分けて、柔軟剤は線ちょうど。指示していた頃には気づかなかった手間が、いちどきに肩へのしかかっていた。
「なんでこんなに時間かかるんだ…」
洗濯かごの前で、夫が言葉を詰まらせた。得意げだった顔が、みるみる曇っていく。
「その第五項、いる?」
私が横から尋ねると、夫は自分のマニュアルを見つめたまま、何も言い返せなかった。
数日後、夫はあの印刷した紙を、そっと引き出しの奥にしまった。
マイルール夫が黙り込んだ理由は、たった一人で全部を回してみて、初めて分かったのだと思う。
それからの夫は、私のやり方に口を出さなくなった。
「どっちでもいいよ」が、すっかり口ぐせになっている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














