「私も昔、この会社で働いていたのよ」女性客の言葉を聞き流した私。その後、上司が突然背筋を伸ばした理由
真夏の店で水を求めてきた女性客
真夏の昼下がり、私は店のサービスカウンターで接客をしていました。
外は照り返しが強く、自動ドアが開くたびに熱気が入ってきます。
そこへ、日傘をたたみながら年配の女性が近づいてきました。ハンカチで首元の汗をぬぐい、少し疲れた様子です。
「すみません、お水をいただけるかしら」
店では飲料水を販売しておらず、お客様が自由に水を飲める場所もありません。
私はいつものように案内しました。
「申し訳ありません。こちらではお水をお出しできなくて……。外の自動販売機をご利用いただけますか」
女性は自動ドアの向こうに広がる駐車場を見て、顔をしかめました。
「こんなに暑いのに、サービスがなってないわね」
「申し訳ございません…」
私が頭を下げると、女性は少し不満そうな顔のまま続けました。
「私も昔、この会社で働いていたのよ」
その言葉を聞いて、私は少し身構えました。
接客をしていると、昔のつながりを持ち出されることもあります。
今回もそうなのだろうと思い、相づちは打ちながらも、話を半分聞き流していました。
ただ、女性が暑さで参っている様子なのは確かです。
このまま帰ってもらうのも気が引けて、私は奥の事務所にいる上司に相談することにしました。
上司も事情を聞けば、同じように案内するだろうと思っていました。
上司が突然背筋を伸ばした理由
ところが、カウンターに出てきた上司は、女性の顔を見るなり足を止めました。
そして次の瞬間、背筋をぴんと伸ばして声を上げたのです。
「主任、お久しぶりです!」
「あら、やっぱりあなただったのね。元気そうでよかったわ」
私は驚いて二人の顔を見比べました。どうやら、以前からの知り合いのようです。
上司はすぐに休憩室へ向かい、冷えたお茶の入ったコップを手に戻ってきました。
「冷たいうちに、どうぞ」
そう言うと、カウンターの外に回り、女性に両手でコップを差し出しました。
女性はにっこり笑って受け取り、お茶を口にしました。そして、私のほうをちらりと見て言ったのです。
「だから言ったでしょう、昔勤めてたって」
「あっ……はい」
私は気まずくなり、小さく頭を下げました。
まさか、本当に上司と知り合いだったとは。
しかも、普段は落ち着いている上司が、あんなに姿勢を正して挨拶するなんて思いもしませんでした。
女性がお茶を飲み終えて帰ったあと、上司に事情を聞いてみました。
すると、女性は上司が新人だったころの指導係だったそうです。
「新人のころは、あの人によく叱られたんだよ。今でも顔を見ると、つい背筋が伸びちゃうんだ」
そう言って、上司はまた背筋をぴんと伸ばしました。
その様子がおかしくて、私も思わず笑ってしまいました。
女性の強い言い方には驚きましたが、「昔ここで働いていた」という話まで聞き流してしまったのは早計でした。
まさか上司が新人時代にお世話になった人だったとは。
あのとき、上司の姿勢が一瞬で変わった光景は、今でも忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














