「もう辞めます」仕事を教えてくれない年下のバイト。だが、私が退職を宣言した時に顔が青ざめたワケ
押しのけられ続けた日々
近所の飲食店でアルバイトを始めたのは、企業就職にことごとく年齢の壁があったからだった。やっと見つけた働き口だったが、同じシフトに組まれた年下の同僚が厄介だった。
彼女は私より数か月先に入っていて、最初から「教えてあげる側」の態度だった。
ところが実際には何も教えてくれない。聞いても無視され、気に入らないとこちらの手を払いのけるようにして仕事を横取りする。理由が分からなかった。
初日から何度聞いても返事がなかった。隣に立って同じ作業をしていると、黙って押しのけてきて自分でやる。こちらが手を出しても怒り、出さなくても舌打ちをする。どちらに転んでも機嫌が悪かった。
ある日、厨房の大将夫婦から少し話を聞いた。彼女の事情が見えてきて、頭では納得できた。大将も「あまり気にしないで」と言ってくれた。優しい言葉だったが、明日も同じシフトに入ることへの答えにはなれなかった。それでも体が拒絶していた。毎日同じシフトで隣に立つのが、少しずつきつくなっていった。
できることが増えても、楽しさが一向に出てこなかった。仕事そのものは嫌いじゃない。ただ、あの空気だけがずっと重くのしかかっていた。
辞めると告げた日
最終的に、辞める気持ちをまとめてオーナーに伝えた。
「もう辞めます」
そう告げた瞬間、すぐそばに立っていた年下の同僚が聞いていた。
振り向いたとき、彼女の表情は見たことのないものに変わっていた。驚きと焦りが混ざったような顔で、目が泳いでいた。私が抜けたあとのワンオペが見えたのかもしれない。いつもの澄ました表情はどこにもなかった。
その顔を見て、何か言う気にはなれなかった。ただ、長い間ため込んでいたものが少し抜けていく感覚があった。
いつも押しのけてきた人が、初めてこちらを見た。たったそれだけのことが、妙にすっきりとした後味を残した。重い空気の中で働いてきた日々に、やっと区切りをつけられた気がした。
店を出た帰り道、久しぶりに足が軽かった。理不尽は我慢するだけじゃなく、自分のペースで終わらせることもできる。それを体で知った日だった。
あの形相が頭の中に残っている。強気に見えた人の、戸惑った顔。
もっと早く動いていればよかったとも思うが、あのタイミングで踏み出せたことが、今でも少し誇らしい。
仕事を探すのは大変だった。次の職場がすぐ見つかる保証もなかった。それでも続けることよりも、きっぱり終わらせることを選んだ。自分のために動くことが、ちゃんとできた。そのことが一番大きかったのかもしれない。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














