tend Editorial Team

2026.06.09(Tue)

「使えねえな、本当に」新人を詰めるチームリーダー。だが、人事部に送られたボイスレコーダーで状況が一変

「使えねえな、本当に」新人を詰めるチームリーダー。だが、人事部に送られたボイスレコーダーで状況が一変

誰も止められなかった

職場のチームリーダーは、機嫌が悪いと言葉が荒くなる人だった。

指摘の内容より言い方がきつく、新人の女性が標的になることが多かった。ミスを指摘するだけでなく、語気が上がって詰め寄るような口調になることがあった。

「使えねえな、本当に」

フロアに響く声に、周囲は固まるしかなかった。小声で返事をするたびに追い打ちをかけるような問いかけが続き、見て見ぬふりをするしかなかった。

自分もそのひとりだった。

新人の女性は次第に発言が減り、表情もかたくなっていった。昼休みも自席でひっそりしていることが増え、そしていつの間にか、出勤そのものが不定期になっていった。明らかに様子がおかしかったが、チームの誰かが上に話を通す様子もなく、空席だけが増えていった。

何もできなかった、という後味がずっと残っていた。声をかければよかった。

一言でも言えばよかった。でも、できなかった。あの子が来なくなってから、その後悔をチーム全員がそれぞれ抱えているようだった。誰も口には出さなかったが、雰囲気でわかった。

録音されていた日々

彼女が来なくなってしばらくした頃、会社宛に封筒が届いた。

「人事部へ」と書かれた小包の中に入っていたのは、小型のボイスレコーダーだった。

総務の担当者が開封し、内容を確認した後で人事に引き継がれた。

録音にはチームリーダーの声があった。強い口調で新人に言葉をぶつけている場面が、日付と時刻とともに複数収められていたという。

あの日々が、すべて記録されていた。言葉を受けながら、ずっとポケットの中でボイスレコーダーを押していたのだろう。

「証拠が届いた」

チームの中で、誰かがそうつぶやいた。

人事が動き、チームリーダーは別部署へ異動になった。それ以降、あの緊張感が戻ることはなくなった。

声を上げられなかった自分が情けなかったし、あの子が一人でずっと記録していたことを思うと、胸が痛かった。

でも、黙って行動していた強さに、何かを教えられた気がした。

誰も動けなかった時間を、あの子はひとりで埋めていた。封筒が届いた朝、長い間つかえていたものがすっと消えた気がした。

フロアに「使えねえな、本当に」という声が二度と響かなくなったのは、あの封筒のおかげだ。あの子が今どこで何をしているかは知らないが、あの行動を思い出すたびに、声を上げられない人にも届く方法はあるのだと、勝手に背中を押された気持ちになる。ちゃんと伝わっていてほしい、と今でも思う。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.06.09(Tue)

「もう辞めます」仕事を教えてくれない年下のバイト。だが、私が退職を宣言した時に顔が青ざめたワケ
tend Editorial Team

NEW 2026.06.09(Tue)

「後々面倒臭くなりそう」「さすがに舐めすぎ」とSNSで物議に。ひろゆき氏、堀江氏への本音と関係修復への思いを語る
tend Editorial Team

NEW 2026.06.09(Tue)

宇都宮市中心部でのクマ連続出没、全ての市立小中学校が全校休校
tend Editorial Team

RECOMMEND

2025.12.14(Sun)

鈴木保奈美が演じる芸能事務所の女社長の凄み ドラマ『スキャンダルイブ』が映し出す芸能界の歪みとジェンダー観への共感
tend Editorial Team

2026.04.01(Wed)

鈴木おさむ「裏垢作る人多いけど、なんで、絶対バレてると思わないのか?」とタレントのSNS事情に私見→「想像力の欠如」「承...
tend Editorial Team

2025.08.23(Sat)

元宝塚歌劇団・毬谷友子『世の中が狂っている』娘を亡くした父への『心無い声』に怒り爆発。SNSの常軌を逸した現状とは
tend Editorial Team