「たまにはメイクするか」久しぶりの食事会。だが、メイクした私に待っていた恐ろしい現実とは
3年ぶりに引き出しから出したコスメ
在宅の仕事に切り替わってから、もう3年になる。
化粧をする機会はほぼゼロになった。
スーパーや近所の用事ならスキンケアだけで出かけてしまうし、それでも特に不便は感じていなかった。
むしろ楽だと思っていた。
ある週末、久しぶりに以前の職場の仲間と会う約束が入った。
(たまにはメイクするか)
ちゃんとした場所に行くのだから、今日くらいはと思ってコスメを引き出しから取り出した。
ファンデーションのスポンジが少し硬くなっていて、ずいぶん放っておいたのだと気づいた。
どのくらいぶりだろうと考えながら、ベースを丁寧に伸ばしていく。目元に少し色を入れるだけで、鏡の自分が変わって見えた。悪くない気分だった。
久しぶりに自分の顔を見た気もした。
支度を終えてバッグを持ち、出かける前にスマホを手に取った。いつも通り顔認証でロックを解除しようとした瞬間、画面が止まった。
「認識できませんでした」
スマホが私の顔を弾いた。
スマホが知っていた私の顔
もう一度試しても、同じだった。角度を変えてみても、ライトに当ててみても、画面はうんともすんとも言わない。
(こんなに違って見えるの?)
仕方なく暗証番号で解除して、鏡の前に戻った。アイシャドウで立体感が出て、リップで唇に色が乗っている。
確かにいつもと違う。でも、ここまで別人扱いされるとは。
スマホは毎日のすっぴんを学習してきた。休日に食料品を買いに行く顔も、眠くて目が半分閉じている朝の顔も、全部記録してきた。そして今日、はじめて出会う顔に「知りません」と判定を下したのだ。
機械は嘘をつかない。それがすこし、こたえた。
友人との時間は楽しかった。懐かしい話をして、笑って、「なんか今日きれいじゃない?」と言われて嬉しかった。
でも帰宅してまた暗証番号を打ち込んだとき、スマホの正直さを思い出した。
化粧でここまで変わるということは、普段の自分はそれだけ素に近いということだ。機械にそれを突きつけられると、妙な気持ちになる。悔しいとも違う。誇らしいとも違う。ただじわじわと、何かが引っかかる。
次の日、スマホの顔認証を再登録した。すっぴんで。どうせまた化粧をするのは特別な日だけだろうから。
それでいいと思う。でもやっぱり、少しだけモヤモヤが残っている。
友人と会った帰り道、夜風の中でスマホを取り出した。また暗証番号を打ち込みながら、小さく笑った。
3年間積み重ねた素顔と、たった一回の化粧した顔。機械に正直さで負けた日だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














