「あれって奢りだよね?」半年で1万踏み倒したママ友。だが、個別会計を頼むと表情が歪んだ
返ってこない立て替え分
同じ公園に通ううちに仲よくなったママ友グループ。月に何度か開くランチ会は、楽しみのひとつだった。ただ、ひとりだけ、お金にだらしない人がいた。
「やだ、財布忘れてきちゃった。立て替えといてくれる?」
毎回そうだった。電子決済が繋がらない、小銭がない、と理由はころころ変わる。そのたびに誰かが代わりに払い、半年が過ぎても、お金が返ってきたことは一度もなかった。
「ほんと助かるー、ありがとね」
そう言って笑う顔には、悪びれた様子がまるでなかった。一人が払えば、次は別の人。順番に立て替えさせて、彼女だけが毎回ただ飯を食べているような格好だった。
積もり積もって、ひとりあたり一万円近く。さすがにおかしいと思い、やんわり催促してみた。
「この前のランチ代、そろそろ精算しない?」
すると彼女は、けろりとした顔でこう言い放った。
「あれって奢りだよね?」
「そういうつもりだと思ってたけど」
しかも、そのセリフをほかのママにも言って回っていた。みんなの我慢が、静かに限界を超えた瞬間だった。
鞄の奥から出てきたもの
私たちは相談して、次のランチ会で決着をつけることにした。
当日、食事も終わりに近づいたころ、彼女がいつもの調子で切り出した。
「ごめーん、今日も財布忘れちゃって」
その瞬間を、私は待っていた。にっこり笑って返す。
「大丈夫。今日はお店に、最初から個別会計でってお願いしてあるの」
彼女の笑顔が、すっと固まった。
「え、でも、私ほんとに一円も持ってなくて……」
「そう?じゃあ、念のためお店の人に聞いてみるね」
私が店員に声をかけようと手を挙げた途端、彼女は慌てて鞄に手を突っ込んだ。そして奥のほうから、しっかり財布を引っぱり出したのだ。
「あ…… あった。ごめん、入ってた」
忘れたはずの財布が、ちゃんと鞄の中にあった。彼女は観念したように、自分の分を支払った。
そこで私は、用意していた一枚の紙を差し出した。これまでの立て替えを、日付と金額で記したものだ。
「これ、今まで貸してた分。確認してもらえる?」
彼女は紙を見つめたまま、ひと言も発しなかった。
「奢りだと思ってた、って言ってたよね。私、ちゃんと覚えてるよ」
別のママが静かにそう告げると、テーブルにいた全員が、無言でうなずいた。逃げ場のなくなった彼女は、財布から札を抜き、一枚ずつテーブルに並べていった。
それから彼女が、グループに顔を出すことはなくなった。追い出したわけではない。自分のまいた種を、自分で刈り取っただけのことだ。気を張らずに笑えるランチ会が、ようやく戻ってきた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














