「何度も座席を蹴られてしまって、眠れないんです」飛行機の座席で足を載せる客。乗務員がそっと収めてくれた
疲れきった帰りの便で
楽しかった旅行も、いよいよ最終日。
私と友人は、真夜中に飛び立つ帰りの便へ乗り込みました。着くのは翌朝という長旅です。
一日じゅう遊び歩いた足は、もう棒のようでした。
機内でやりたいことは、ただひとつ。眠ることだけでした。私は座席に深く身を沈め、離陸を待つ間もなく、そっとまぶたを閉じました。
ほどなく客室の照明が落とされ、あたりは寝息の混じる静けさに変わります。
私も、心地よい疲れに引かれるように、眠りへと落ちていきました。
眠りを破る振動
どれくらい経ったでしょう。
とんっ、と背もたれに軽い振動が走り、私は浅い眠りから引き戻されました。
気のせいかと思ったのも束の間、また同じ衝撃が伝わってきます。
二度、三度と続く振動に、とうとう私は眠っていられなくなったのです。
そっと後ろを振り返ると、席の人が背もたれの上へ足を伸ばそうとしていました。
その足が動くたびに、私の背中へこつこつと当たっていたのです。
狭い機内で足がつらいのは、お互いさまでしょう。
それでも、他人の座席へ足を載せるのは、やはり度を越しています。
胸のなかに、もやもやとした思いが広がりました。
とはいえ、相手は眠っているのか、目を閉じたまま。肩を叩いて起こしてまで、面と向かって言う気にはなれませんでした。
角を立てずに
どうしたものかと迷ったすえ、私はそばを通った客室乗務員を、そっと呼び止めることにしました。
ほかの乗客を起こさないよう、声を落として打ち明けます。
「後ろの方に、何度も座席を蹴られてしまって、眠れないんです」
乗務員はやわらかく微笑むと、心得たように後ろの席へ向かいました。
相手を責めるでもなく、そっと耳もとで何かを告げると、伸びていた足はすっと下ろされたのです。
「ご協力ありがとうございます。どうぞごゆっくりお休みください」
戻ってきた乗務員は、私にそう声をかけてくれました。ひとことも角を立てないまま、あっという間に場を収めてくれたのです。
正直に言えば、自分で注意する勇気はありませんでした。それでも、頼れる人にきちんと頼ったからこそ、丸くおさまったのです。私は残りの時間を、心おきなく眠って過ごせました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














