「客の話を遮るとは何事だ!」クレーム電話で謝罪を繰り返した私。隣の上司がそっと差し出したメモに書かれていた内容とは
怒鳴り声が2度続いた電話
電話のお客様窓口に座って、何年かになる。クレームにも慣れたつもりでいたが、その日の男性は最初からかなり強い口調だった。
「これ、どういう作りなんだよ。こんなのでよく売ってるな」
私は相づちを打ちながら、指摘された内容を手元の用紙に書き取っていった。
ところが途中で、男性の話が社内資料の内容とは違うように聞こえた。本来なら最後まで聞いてから確認すればよかったのに、私は反射的に口を挟んでしまった。
「いえ、それは違います」
言った瞬間、しまったと思った。
「……は?今、何て言った?」
男性の声が一気に大きくなる。
「客が話してる途中だろ。客の話を遮るとは何事だ」
「申し訳ございません。今の言い方は」
「だから、客の話を遮るとは何事だって言ってるんだ!」
同じ言葉を2度ぶつけられ、私は言葉に詰まった。
「まず謝るのが先じゃないのか。こっちは不快な思いをしたんだよ」
話を遮ったのは私のミスだ。私は受話器を握り直した。
「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした」
「……それ、本当に悪いと思って言ってる?」
「申し訳ございません」
「そうじゃなくてさ。気持ちが伝わってこないんだよ。もう一回ちゃんと謝って」
私はもう一度頭を下げるような気持ちで謝った。
それでも「ちゃんと分かってるのか」「その謝り方じゃ伝わらない」とやり取りは続き、気づけば10分ほどたっていた。
机に置かれた一枚のメモ
そのとき、視界の端に白い紙がすべり込んできた。
隣の席の上司が、メモ帳を一枚ちぎって私の机に置いたのだ。
そこには、ひと言だけ書かれていた。
「代わります」
私は上司を見る。上司は小さくうなずき、受話器へ手を伸ばした。
「お電話代わりました。担当の上司です」
そのあとは、私は隣で上司の対応を聞いていた。
上司は何度か「はい」「そうだったんですね」と相づちを打ち、相手の話が終わるまで口を挟まなかった。
やがて、落ち着いた声で言った。
「お話の途中で遮ってしまったことについては、こちらからもお詫びいたします。申し訳ございませんでした」
少し間を置き、続ける。
「そのうえで、商品の件もきちんと確認させてください。どのような点が気になったのか、順番に伺ってもよろしいでしょうか」
再び相手の話を聞いたあと、上司はもう一度、本題へ戻した。
「はい、分かりました。では商品の状況について、もう少し詳しく確認させてください」
しばらくすると、上司の相づちの間隔もゆっくりになっていった。
「承知しました。内容を確認して、担当部署へ共有いたします」
そう言って上司が受話器を置いた。
張りつめていた私は、そこでようやく息を吐いた。
上司が私のほうを向く。
「最初、相手は何て言ってたの?」
「『客の話を遮るとは何事だ』って……2回言われました」
「そっか。最初に『違います』って言っちゃったのは気をつけようね」
「はい……」
「でも、そのあとはちゃんと謝ってたよ。長くなりそうなときは、一人で抱えなくていいから」
その言葉を聞いて、肩の力が抜けた。
私は「代わります」と書かれたメモを、用紙の束のいちばん上に挟んだ。
上司が聞き取った商品の内容は、その日のうちに担当部署へ回された。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














