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2026.09.21(Mon)

「悪いけど、二皿ちょうだい」ホテルの朝食で列を無視した男性。コックの対応に黙った理由

「悪いけど、二皿ちょうだい」ホテルの朝食で列を無視した男性。コックの対応に黙った理由

お一人様二皿までの張り紙

家族旅行の二日目の朝、夫と子ども二人と一緒にホテルの朝食会場へ下りた。バイキングの台の前はどこも混んでいて、トレーを持った宿泊客がひっきりなしに行き交っていた。

中でも長い列ができていたのが、ローストビーフのコーナーだった。ガラスの仕切りには「お一人様二皿まで」と書かれた張り紙があり、コックさんが肉を切り分け、一皿ずつ渡している。

夫ともう一人の子どもには席で待ってもらい、私は息子と列に並んだ。

「うわ、けっこう並んでるね」

「人気みたいだね。もう少しだから待とうか」

そんな話をしながら少しずつ前へ進み、あと数人というところまで来た。

そのときだった。60代くらいに見える男性が横から歩いてきて、そのまま列の前へ入った。

そしてコックさんに向かって、軽い調子で声をかけた。

「悪いけど、二皿ちょうだい」

後ろに並んでいた男性が驚いた様子で声をかけた。

「すみません、みんな並んでますよ」

すると男性は列を振り返り、少し面倒そうな顔をした。

「いや、二皿もらうだけだから。すぐ終わるよ」

「みんな同じですよ。後ろに並んでますから」

そう言われると、男性は眉を寄せた。

「ちょっとくらいいいだろ。そんなに時間かからないんだから」

息子が私の袖を引き、小さな声で聞いてきた。

「あの人、並ばなくていいの?」

「ううん。みんな待ってるから、順番だよ」

周囲の人たちも気になったのか、ちらちらと男性のほうを見ていた。

コックさんが示した先

コックさんは手を止めると、男性へ穏やかに声をかけた。

「お客様、申し訳ありません。こちらは並んでいただいている順番にお渡ししています」

男性は少し不満そうに列を見た。

「二皿だけだよ?これだけ並ばないとダメなの?」

コックさんはガラスに貼られた「お一人様二皿まで」の案内を手のひらで示した。

「はい。皆さま同じようにお待ちいただいておりますので、恐れ入りますが最後尾からお願いいたします」

男性は一瞬黙ったものの、まだ納得できない様子だった。

「本当にちょっとだけなんだけどな」

「申し訳ありません。順番にご案内しております」

コックさんの声は変わらなかった。

男性は張り紙と長い列を交互に見たあと、小さく息を吐いた。

「……じゃあ、もういいよ」

そう言って向きを変え、そのまま席のほうへ戻っていった。

大きな言い争いにはならず、止まっていた列も再びゆっくりと進み始めた。

しばらくして、ようやく私たちの番になった。

「お待たせしました。どうぞ」

コックさんが息子に皿を差し出す。

息子はうれしそうに受け取り、私を見上げた。

「ちゃんと待ったらもらえたね」

「そうだね。お父さんたちも待ってるし、戻ろうか」

席へ向かいながら振り返ると、コックさんはもう次の人のローストビーフを切り分けていた。

男性を強く責めることも、声を荒らげることもなく、ただ同じルールを繰り返し伝える。その落ち着いた対応が印象に残った朝だった。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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