「子どもに5万はまだ早いから」親戚の前で甥から入学祝いを取り上げた母に、祖母が本人へ返させた末路
祝いの席のはずが
甥の高校入学を祝おうと、その日は親戚がひとつの食卓を囲んでいました。めでたい門出に、みなが笑顔で杯を交わす、あたたかな席のはずだったのです。
私の母は、甥にとっては祖母にあたります。その母が、うれしそうに一枚の封筒を取り出しました。入学祝いの五万円を、孫のために用意していたのです。
「頑張ったね。好きなものを買いなさい」
母は封筒を、まっすぐ甥の手に握らせました。甥も照れくさそうに、ありがとうおばあちゃん、と嬉しそうに受け取ります。
けれど、その隣にいた甥の母親の表情は、なぜか晴れませんでした。そして、静かに手を差し出したのです。
「子どもに5万はまだ早いから」
言うなり、甥が手にしたばかりの封筒を抜き取って、自分のバッグの奥へしまってしまいました。楽しげだった話し声が、いっせいに途切れます。私はただ、目を疑うばかりでした。
祖母が返させた
母が、思わずといった様子で声をもらしました。
「あの子に、あげたお金なのに」
それでも甥の母親は、少しも動じません。
「大きなお金を持たせても、無駄遣いするだけでしょう」
そう言い切って、話を切り上げようとします。けれど母は引きませんでした。声を荒らげるでもなく、まっすぐに嫁を見て、静かに言い切ったのです。
「それは、私があの子に渡したお祝いよ。どうか、本人に返してあげて」
穏やかでいて、有無を言わせない響きがありました。祖母がなおも続けます。「使い方が心配なら、そばで教えてあげればいい。取り上げてしまったら、この子は学ぶ機会までなくしてしまうでしょう」と。その言葉に、甥の母親はしばらく黙り込みました。
やがて、観念したように小さく息をつくと、渋々バッグから封筒を取り出し、甥の手へと戻したのです。「……大事に使いなさい」と、ばつが悪そうにひとこと添えて。
それまでうつむいていた甥の顔が、ぱっと晴れていくのが分かりました。「ありがとう、おばあちゃん。お母さんも、ありがとう」とはにかむ声に、祖母もやさしくうなずきます。宙で行き場を失っていた祝いの気持ちが、ようやくきちんと甥のもとへ届いた瞬間でした。母に礼を言われた甥の母親も、決まりが悪そうにしながら、どこかほっとした表情を見せていたのが印象的です。
頭ごなしに責めるのではなく、相手の心配にも理を通しながら、それでも譲らない。祖母のたったひとことが、しらけかけた食卓の空気をまるごと変えてしまいました。あの日の母の凛とした横顔を、叔父である私は今も忘れられずにいます。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














