「合計が違う。俺が計算した分より、ずいぶん高いぞ」思わず声を荒らげてしまった客。店員がレシートと商品を照らし合わせた結果
合計が違うという訴え
その日のスーパーは、閉店前の時間で、どのレジにも長い列ができていました。
私のひとつ前に並んでいた年配の男性が、レシートと財布を見比べながら、店員に食い下がっていたのです。
「合計が違う。俺が計算した分より、ずいぶん高いぞ」
語気は強く、後ろの客が落ち着かない様子で足を踏みかえています。
店員はまだ二十代に見える女性で、私は内心、気の毒だな、と思っていました。
男性はレシートの数字を指で叩きます。
列はさらに伸びていきました。後ろのほうから、小さなため息もいくつか聞こえてきます。
男性は引くつもりがないようで、財布を握った手が、少し震えているようにも見えました。
レシートと商品を照らして
けれど店員は、慌てるでも言い返すでもなく、静かに答えました。
「レシートとお買い上げの商品を、一緒に確かめさせてください。少しだけ、お時間をいただけますか」
「そんなに買った覚えはないんだ。おかしいだろう」
「ええ。ですから、ひとつずつ突き合わせてみましょう」
男性は買い物袋をレジ台に置きました。店員はレシートとレジに打ち込まれた履歴を確認しながら、袋の中の商品を上から順に確かめていきます。
「お茶、ひとつ。豆腐、ひとつ……」
ひとつずつ、男性にも見えるようにレシートを示しながら、実際の商品と照らし合わせていきました。
確認する声はどこまでも穏やかで、いつしか男性も、レシートを叩く手を止めて、その様子を見つめていました。
そして中ほどまで来たところで、店員の手がぴたりと止まったのです。
袋の中に入っていた惣菜のパックは、ひとつ。しかし、レシートには同じ惣菜が2点分記録されていました。
同じ商品を続けて二度スキャンしてしまっていたのです。金額が合わなかったのは、まさにそのぶんでした。
下げられた頭
店員はすぐに確認を取り、多く受け取った分の返金手続きをしました。
声を荒らげていた相手に対しても、その物腰はまるで変わりません。
「私どもの打ち間違いです。申し訳ありませんでした」
男性は返金を受け取ると、ばつが悪そうに視線を落としました。
先ほどまでの強い口調は、もうどこにも見当たりませんでした。
「いや……騒いで、こっちこそ悪かったな」
店員は最後に、顔を上げてこう添えました。
「気づいてくださって、助かりました。ありがとうございます」
その一声で、ぴりついていた列の空気がふっとゆるみました。男性は照れたように頭をかき、袋を持って帰っていきます。
次に会計をするためレジの前へ進んだ私は、店員の落ち着いた対応に、思わず頭を下げていました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














