【日常ミステリー】「鞄に絶対入れたのに」探しても出ない画材→別物を探した30代女性の服から出てきた異常
通勤鞄の内ポケットに入れていた譲り物の画材
引っ越す知り合いから譲り受けた画材一式の中で、私が一番大切にしていたのは銀色のキャップが目印の筆ペンだった。
仕事の合間や帰り道、ふと景色を留めたい時にすぐ取り出せるよう、通勤鞄の内ポケットにいつも入れていた。
鞄を替える日には真っ先にその画材を新しい鞄へ移していたし、内ポケットには財布も鍵も他の小物も入れない決まりにしていた。
だから定位置は常に同じはずだった。誰かに貸した記憶もなく、外で取り出して使った時もすぐに同じ場所に戻していたし、出社中に書類と一緒に取り出した日も帰宅後すぐ確認するのが習慣になっていた。
鞄を全部ひっくり返しても消えていた画材
ある午後、いつものように内ポケットへ手を伸ばすと、いつもの硬い感触がない。机に鞄の中身を全部広げ、内ポケットを裏返してみても出てこない。
「鞄に絶対入れたのに」
会社の机を離れて休憩室に行き、コートのポケットや椅子の下まで覗いた。
家に帰っても探した。床に大きなビニール袋を広げて鞄を逆さにし、縫い目の中まで指でなぞるように確かめた。
鞄の底に薄く溜まったレシートの束まで一枚ずつ広げてみたが、銀色のキャップは出てこない。
鞄を替える時の自分の動作を何度も頭の中で再生したが、どこで取り出したかも、どこで落としたかも、思い当たる場面が一つもなかった。
譲ってくれた相手に何と言えばいいのかと、何ヶ月もずっと胸の隅で気になり続けた。
同僚に話しても「ポケットの中で穴空いてない?」と心配されただけで、もちろん穴は空いていなかった。
冬物を探していたクローゼットの奥で鳴った硬い音
季節が変わって、寒くなり始めた朝のことだった。クローゼットの奥にしまった冬物のストールを探していて、ハンガーごとコートを何枚かまとめて引き出した瞬間、コツンと床に硬い音が落ちた。
視線を下げると、銀色のキャップが転がっていた。
あの画材だった。コートと厚手のニットの間にぴったり挟まるように収まっていたらしい。鞄から取り出した記憶もなければ、服と服の隙間に置いた記憶もない。
拾い上げると、長く冷たい場所にあったせいか、指先にひんやりとした感触だけが残った。
一緒にいた夫に見せても、夫はただ静かに首を横に振るだけだった。
クローゼットを開け閉めするのはほぼ私で、夫はそもそも私の服の方には触らない。
あの画材がどうしてクローゼットの服の隙間にあったのか、数年経った今も理由は分からないままだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














