「忘れるわけないって」大学時代に貸した3千円を諦めた私。数年後、偶然再会した同級生から聞かされた言葉
大学時代に貸した3千円
大学に入学したばかりの春のことです。同じ授業で仲良くなった男子の同級生たちと、授業のあとに大学近くの食堂へ行きました。
食事を終えたころ、同じテーブルにいた同級生が財布を開き、急に困った顔をしました。
「あれ、やばい。現金がない…。下ろしてくるの忘れてた」
「えっ、足りないの?じゃあ、貸しとくよ」
私は財布から3千円を取り出して渡しました。同級生はほっとした表情になり、何度もお礼を言ってくれました。
「助かった! 次に会ったとき、絶対返すから」
「うん、いいよ。気にしないで」
そのときは、次に会えば返してもらえるだろうと軽く考えていました。
ところが、その後は同級生となかなか顔を合わせる機会がありませんでした。
ずいぶんたってからキャンパスで姿を見かけ、私から近づいて声をかけたことがあります。
「おっ、久しぶり!元気?」
「うん、元気。そっちは?」
そんな何気ない会話をして、そのまま別れました。3千円の話は一度も出ませんでした。
もしかして、忘れてるのかな。
私も「あのときのお金なんだけど」と言いかけたものの、催促するのが気まずくて、結局何も言えませんでした。
それからは、すれ違えば軽く会釈する程度の関係に。
向こうはもう、借りたことなんて覚えていないだろう。
そう思い込んだ私は、3千円は返ってこないものとして、考えないようにしていました。
新人研修で隣に座った男性の正体
それから数年後、就職した私は新人研修の初日を迎えました。
慣れないスーツ姿で研修室に入り、指定された席に座っていると、少し遅れて隣に男性が腰を下ろしました。
横顔を見た瞬間、どこかで会ったことがあるような気がしました。
すると男性もこちらを向き、私の顔を指さして、ぱっと表情を明るくしたのです。
「えっ!大学のとき、3千円貸してくれたよね?」
「……えっ?あっ、あのときの!?」
なんと、大学時代のあの同級生だったのです。
私は驚いて言葉が出ませんでした。忘れていると思っていた相手が、私の顔だけでなく、貸した金額まで覚えていたのです。
突然「3千円」という言葉が飛び出したせいか、周りの同期たちもこちらを見て、くすくす笑い始めました。
そして休憩時間。
缶コーヒーを手に隣の席へ戻ってきた同級生が、私の前に3千円を差し出しました。
「ずっと返したかったんだ」
「えっ、本当に覚えてたの?」
「うん。会うたびに言おうと思ってたんだけど、なんかタイミング逃しちゃってさ。遅くなってごめん」
その言葉に、私は思わず笑ってしまいました。
「絶対、忘れてると思ってたよ」
「忘れるわけないって。顔見るたびに『あっ、3千円』って思ってたんだから」
「なんだよ、それ! だったら言ってよ!」
前の列で話を聞いていた同期が、振り返ったまま、こらえきれずに吹き出しました。
お互いに返さなきゃ、言わなきゃと思いながら、結局何も言えずにいたのです。
その話は、その日のうちに研修の同期たちの間に広まってしまいました。
そして翌朝。研修室の扉を開けた瞬間、前の列から明るい声が飛んできました。
「おはよう、3千円の人!」
もう返ってこないと思っていた3千円が、まさか新人研修でこんな笑い話になるとは。
数年越しに返ってきたお金と、思いがけない再会。私にとって、忘れられない研修初日になりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














