「遺産って結局いくら残ったの?」遺産の額を何度も聞く親戚。だが、義父が口にした短い返事
法要後の食事で、突然出たお金の話
数年前、夫の祖父の七回忌がありました。法要を終えたあと、親族15人ほどがそのまま残り、長机を囲んで食事をすることになりました。
仕出しの弁当が並び、最初は祖父の思い出話をしながら穏やかに過ごしていました。
子どものころにしてもらったことを話す人もいて、ときどき笑い声も上がっていました。
そんな中、親戚の一人がふいに口を開きました。
「そういえば、遺産って結局いくらくらい残ったんだっけ?」
さっきまで続いていた会話が、そこで止まりました。
近くにいた親戚が困ったように声を落とします。
「ちょっと…今ここでする話じゃないでしょう」
けれど、質問した本人はそれほど気にしていない様子でした。
「いや、今後の参考にと思ってさ」
私は思わず手を止めました。周りを見ても、何と返せばいいのか分からないような空気になっていました。
そこで、施主だった義父が静かに答えました。
「まあ、大した額じゃないよ」
それで終わるのかと思ったのですが、親戚はさらに聞きました。
「え、でも具体的にはどれくらい?」
同じ返事をした義父に、それ以上の質問はなかった
私は義父がどう返すのか気になって、黙って見ていました。
義父は怒った様子もなく、声を荒らげることもありませんでした。
少し間を置いて、先ほどとほとんど同じ調子で言いました。
「だから、大した額じゃないよ」
二度目の返事が出ると、質問した親戚もそれ以上は聞きませんでした。
周囲からも言葉は出ず、しばらく静かな時間が流れました。湯呑みを置く小さな音だけが聞こえたのを覚えています。
やがて別の親戚が、次の法事についての話を始めました。そこから少しずつ会話が戻り、遺産の話が再び出ることはありませんでした。
質問した親戚もそのまま最後まで席にいて、帰りにはいつも通り挨拶をしていました。誰かが強く注意したり、席から追い出したりしたわけではありません。
帰り道、夫がぽつりと言いました。
「親父、ああいうとき上手だな」
私はうなずきました。
「うん。二回とも、ほとんど同じことしか言ってなかったね」
はっきり「答えません」と突っぱねたわけでも、相手を責めたわけでもありません。それでも、同じ返事を繰り返したことで、それ以上話を広げる余地がなくなったように感じました。
あの日のことを思い出すたび、答えたくない質問には、無理に説明を重ねなくてもいいのかもしれないと思います。
私自身もそれ以来、答えにくいことを何度も聞かれたときは、一度伝えた返事を変えずに繰り返すことがあります。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














