「ジュースでも買いなさい」ただの世話好きの別部署の人だと思っていた。だが、昼休みの行動に思わず凍りついた
断っても、ポケットに入れられた小銭
その方とは、同じ会社の別部署というだけの関係でした。
仕事で一緒になったことはなく、顔を合わせるのも廊下くらい。それでも気さくな方で、会えば向こうから声をかけてきました。
「今日は寒いですね」
最初は、そんな何気ない会話だけでした。
ところがある日、上着のポケットから小銭を出し、私に差し出してきました。
「ジュースでも買いなさい」
「いえ、そんな。いただけません」
そう断ると、その方は笑いました。世話好きな人なのだろうと、そのときは深く考えませんでした。
けれど、その後も同じことが続きました。
「本当に大丈夫ですから」
そう言っても、「いいから」と小銭を上着のポケットへ入れられます。
それが何回も続きました。
家に帰るたび、入れられた小銭を机の引き出しにしまいました。次に会ったら、もっとはっきり断ろう。そう思っていました。
誰にも話していない場所に、その方がいた
そのころ私は、昼休みになると会社を出て、近くの公園に車を停めて一人でお弁当を食べていました。
誰かを避けていたわけではありません。
ただ、昼くらいは一人で静かに過ごしたかったのです。その場所を誰かに話したこともありませんでした。
ある昼休み、運転席で食事をしていると、突然窓を叩く音がしました。
顔を上げると、袋を提げたその方が立っていました。
「これ、よかったら」
袋の中にはお菓子が入っていました。
私は返事に詰まりました。
「気にしていいと思う」と言われて
小銭を断ってもポケットに入れられ、一人で過ごしていた場所にも現れた。
そのことが重なり、私は上司に相談しました。
話を聞いた上司は、短く言いました。
「それは、気にしていいと思う」
「……はい」
誰かにそう言ってもらえたことで、ようやく自分が感じていた怖さを、そのまま受け止めてもいいのだと思えました。
しばらくすると、廊下でその方と顔を合わせることはなくなりました。それ以上、何か危害を加えられたわけではありません。
私は今も同じ会社で働いていますが、あれ以来、その方とは一度も話していません。
悪い人だったのかは、今も分かりません。声を荒らげられたこともありませんでした。
ただ、こちらが距離を取りたいと思っていても、相手にはそれが伝わっていない。そのことが、私には怖かったのです。
今でも上着のポケットに手を入れると、ときどきあの小銭の感触を思い出します。そして、あのころ自分がどこまで見られていたのかは、今も分かりません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














