「レジの派手な女の態度が最悪だ」と本部へ苦情。翌週、車検証を持ってきた男性に店長が示した記録
本部から届いた、一件の苦情
連休明けの朝、出勤するとすぐに店長から事務所へ呼ばれた。
カー用品店でレジを担当して数年になるが、朝いちばんに呼ばれるのは初めてだった。
店長はパソコンの画面を見ながら、少し困ったような顔をした。
「本部に苦情が入ってるんだ。『レジの派手な女の態度が最悪だった』って」
「……たぶん、私のことだと思います」
すぐに心当たりが浮かんだ。
連休の中日、売り場もピットもお客さんであふれ、スタッフは全員接客に出ていた。
その時間、レジにいたのは私ひとり。
朝礼でも、レジから離れないようにと言われていた。
そこへ男性客が来て、バッテリーを選んでほしいから車まで見に来てくれと言ったのだ。
「車検証があれば、こちらで適合をお調べできます」
「持ってないよ。車、外にあるんだから見に来ればいいだろ」
「申し訳ありません。今はレジを離れられないので、作業受付をしていただければ、整備スタッフがお車を確認します」
「そんなの待ってられないよ。今すぐ来て」
私は無線で応援を呼んだが、そのときは誰からも返事がなかった。
それでも男性は納得せず、「今すぐ来て」と何度も繰り返した。結局、何も買わずに店を出ていった。
店長が確認した、あの日の記録
私の話を聞くと、店長はレジの内側に貼ってある「レジには必ず1名が残ること」という店の規定を確認した。
さらに、あの日の時間帯の無線記録も開き、私が応援を求めていたことと、その場ですぐに応答できるスタッフがいなかったことを確かめていった。
「そっか。あの時間、本当に誰も動けなかったんだな」
店長は画面から目を上げた。
「すぐにフォローできなくて悪かった。君は店の決まりどおり案内してるよ」
「本部には、どう返しますか?」
「そのまま事実を伝えるよ。記録も残ってるから」
それを聞いて、ようやく肩の力が抜けた。
翌週、男性が持ってきた車検証
翌週の夕方、見覚えのある男性がカウンターに現れた。
手には、前回持っていなかった車検証があった。
私が声をかけようとすると、店長も隣に来た。
そして前回の件について、落ち着いた口調で男性に説明した。
「先日はご不快な思いをされたとのことで、本部からも連絡を受けています。ただ、こちらの者は当日の店の決まりに沿ってご案内しておりました」
そう言って店長は、レジを離れないという規定の紙と、当時の無線対応を確認した記録を男性に示した。
「車検証をお持ちいただければ、今回はここで確認できます」
男性はしばらく紙を見ていたが、言い返すことはなかった。
やがて無言で車検証を差し出した。
店長が確認すると、数分で適合するバッテリーが分かった。
男性はそのまま商品を購入し、会計を済ませると店を出ていった。
その後、後ろに並んでいた常連の男性客が、小さな声で私に言った。
「あの日もいたけど、ひとりでずっとレジやってたよね」
「……ありがとうございます」
私はそう返してから、気持ちを切り替えるように次のお客さんへ向き直った。
「お待たせしました。次の方、どうぞ」
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














