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2026.10.17(Sat)

「まだうちの子の番じゃないし」授業参観で話し続ける母親。しかし、自分の息子が発表する番になると

「まだうちの子の番じゃないし」授業参観で話し続ける母親。しかし、自分の息子が発表する番になると

小さくなっていく発表の声

小学校で教えていたころ、授業参観で忘れられない出来事がありました。

その日は、子どもたちが順番に黒板の前に立ち、調べたことを発表する授業でした。

ところが、授業が始まってからずっと、教室のうしろで数人の母親たちが話し込んでいたのです。

「ねえ、この前の集まり、来なかったよね?」

「うん、ちょっと用事があってさ」

最初は小声だったのですが、だんだん話が弾んできたようでした。

黒板の前では、一人の女の子が一生懸命に発表しています。しかし、ノートから顔を上げるたびにうしろが気になるようで、声が少しずつ小さくなっていきました。

私は教卓の横から、女の子にうなずきました。

「大丈夫だよ。続けてごらん」

近くに立っていた保護者も、何度か母親たちのほうを振り返っていました。眉をひそめる父親もいましたが、おしゃべりは止まりません。

そのうち、笑い声まで聞こえてきました。

「ちょっと、声大きいよ」

一緒にいた母親の一人が、小声で注意しました。

すると、明るい色のカーディガンを着た母親は、手をひらひら振って答えました。

「大丈夫だって。まだうちの子の番じゃないし」

その言葉を聞いて、私は驚きました。

自分の子どもが発表していなければ、話していても構わないと思っているのでしょうか。

もちろん、授業中の私語は注意すべきです。ただ、子どもが発表している最中に話を遮ることもためらわれ、私は声をかけるタイミングをつかめずにいました。

「ママ、しずかにしてて」

やがて、カーディガンの母親の息子が発表する番になりました。

男の子はノートを胸に抱え、黒板の前に立ちました。

ところが、教室のうしろではまだ話し声が続いています。

男の子は発表を始めず、母親のほうへ顔を向けました。

そして、はっきりした声で言ったのです。

「ママ、しずかにしてて」

母親たちの話し声が止まりました。

男の子は続けました。

「みんな、がんばって発表してるんだから」

近くの子どもたちが振り返り、ほかの保護者たちの視線も教室のうしろへ集まりました。

カーディガンの母親は、笑顔のまま動きを止めていました。

「えっ……いや、その……」

何か言おうとしたものの、言葉が続きません。

母親は頬を赤くしてうつむき、周囲で話していた母親たちも気まずそうに黙っていました。

静かになった教室で、男の子は何事もなかったように前へ向き直りました。

そしてノートを開き、背筋を伸ばしました。

「では、発表します」

さっきまでとは違い、その声が教室のうしろまではっきりと届きました。

私は教卓の横で、男の子に大きくうなずきました。

それ以降、授業が終わるまで母親たちの話し声は聞こえませんでした。

最初に小さな声で発表していた女の子も、友だちの発表に大きな拍手を送っていました。

母親たちは最後まで壁際で静かに立っていました。

本来なら、教師である私がもっと早く声をかけるべきだったのでしょう。

それでも、友だちの頑張りを大切に思い、自分の母親にもきちんと気持ちを伝えた男の子の姿が、今でも印象に残っています。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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