「素敵なご主人ね」BBQの場で同僚に育児を語った夫。だが、休日の夫の本当の姿をバラした結果
慣れた手つきの裏側を知っているのは私だけ
夫の会社の同僚家族とのBBQに駆り出されたのは、子どもがまだ年少の頃だった。
家ではテレビの前から動かない夫が、その日に限ってトングと軍手を新調し、子どもの椅子の高さまで気にしていた。
現地でも、慣れた手つきで肉を切り、子どもの皿に取り分ける。
同僚の奥さんたちの目は、すっかり「育児に積極的なご主人」に注がれていた。
夫はワインの紙コップを片手に、得意げに語り始めた。
育児方針、休日の過ごし方、子どもの教育のこだわり。誰が聞いても完璧な父親像が、夫の口から流れ出てくる。
同僚の男性陣も「すごいね」「自分はそこまでできない」と頷き、奥さんたちは旦那の脇腹を肘でつついていた。
普段の家を知っている私だけが、紙皿に取った野菜を口に運びながら、内臓の奥が冷えていくのを感じていた。
オムツ替えは月に数回、夜泣き対応はゼロ、幼稚園の名前も先生の顔も覚えていない男が、なぜここまで堂々と父親を演じられるのか。
同僚の奥さんから「素敵なご主人ね」と肩をぽんと叩かれた瞬間、笑顔のまま反撃を決めた。家の鍵を開けた瞬間にソファに沈み込む夫と、ここで肉を取り分けている夫が、同じ人物だとは思えなかった。
気づけば奥さんたちの輪は夫を中心に広がり、お世辞のような相槌の声がいくつも重なる。
私は子どもの皿を整えながら、その輪の端に立った。これ以上ここで黙っていたら、自分の365日が無かったことにされる、そんな感覚が背中を押した。
炭の上で固まった夫の顔
奥さんたちの輪の真ん中で、私はわざと明るい声を上げた。
「今日のために練習してきたのね」
夫の手が止まる。私は続けた。普段はオムツの前後も逆につけてしまうこと、子どもの通う幼稚園の名前すら言えないこと、休日も家で寝ていることが多いこと。
全部、声色は明るく、まるで微笑ましいエピソードを披露するようなトーンで並べた。
奥さんたちの表情がじわじわと変わった。一人が口元を覆い、別のママは目を伏せて炭の方を見る。
最初は冗談だと笑っていた人たちも、夫が反論できずに固まっている姿を見て、苦笑いに切り替わっていった。同僚の男性陣の何人かは、肩を揺らして黙って笑っている。場の空気は完全に裏返り、夫は最後までトングを握り直すこともできずに立ち尽くしていた。
その日以降、夫は私の前で「俺はやってる」と語らなくなった。BBQ会場で見た自分の姿が、よほど効いたのだろう。代わりにオムツの履かせ方を子どもに確認している姿を、初めて見るようになった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














