「これ、どうぞ」コンビニで困っていた若い店員を助けられなかった私。だが、会計時にした小さな行動とは
レジで繰り返された「番号でお願いします」
昼どきのコンビニは混んでいました。開いているレジは一つだけで、私の後ろにも何人か並んでいます。
私は列の二番目にいました。レジ横には小さなお菓子が並んでいて、待っているあいだ、なんとなくその棚を眺めていました。
先に会計をしていた方が、たばこの銘柄を伝えました。応対していたのは若い店員さんです。店員さんは棚を見ましたが、どの商品なのか分からないようでした。
「すみません、番号でお願いできますか」
しかし、うまく伝わらなかったのか、やり取りは続きます。
「番号でお願いできますか」
店員さんは三度ほど同じお願いを繰り返していました。最初よりも声が小さくなっていくのが、後ろにいた私にも分かりました。
何か言ったほうがいいのだろうかと思いました。でも、私には相手がどのたばこを求めているのかまでは分かりません。
口を挟んでも余計にややこしくなる気がして、動けずにいました。
そのうち奥から別の店員さんが出てきて、商品を棚から取り、会計は終わりました。先ほどの方は文句を言いながら店を出ていきました。
結局、私は何もできませんでした。
自分の番になったとき、レジ横にあった小さなお菓子を一つ、かごに足しました。
会計を済ませても袋には入れてもらわず、そのままカウンターに置きました。
「これ、どうぞ」
店員さんは驚いた顔で私を見ました。
「え…?」
「いや、たいしたものじゃないですけど」
それだけ言って、私はレシートをポケットに入れ、店を出ました。
あの店員さんのためだけではなかった
外に出ると、一緒に店へ来ていた人から聞かれました。
「何か買ってた?」
「うん、ちょっとね」
それ以上は説明しませんでした。
店員さんを助けた、などと言えるようなことではありません。
むしろ、困っているのを見ながら何もできなかった自分が、そのまま店を出るのが嫌だったのだと思います。
あのお菓子一つで何かが変わったとは思いません。それでも、何もできなかったあとに、自分なりにできることを一つ探した。それでよかったのだと、今は思っています。
あの店には今も行くことがあります。レジ横には変わらず、小さなお菓子が並んでいます。あの店員さんが今も働いているのかは、もう分かりません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














