混雑する朝の電車でスマホに夢中の若者→少し詰めれば乗れるのに動かない後ろで黙り込んだ乗客たちの違和感
朝の混雑、扉のそばで止まったままの若者
通勤ラッシュの時間帯。
身を縮めるようにして電車に乗り込むと、扉のすぐ脇に若者が立っていました。
両手で握りしめたスマートフォンの画面に、深く深く視線が落ちている様子。
動画なのか、ゲームなのか、何かに夢中で外の世界が見えていないようでした。
停車のたびに、新しい乗客がホームから乗り込もうとします。
しかし、若者は一歩も奥に下がりません。
背中の向こう側にはまだ余裕があり、彼が少し動けば、四人か五人は乗れたはずでした。
(あと半歩、ずれてくれれば…)
そう思っていたのは、私だけではないと思います。
ホームの乗客が一瞬迷う表情を見せたあと、諦めて身を引いていく。
そのたびに、車内には小さなため息が音もなく広がっていきました。
誰も声を出さなかった、その本当の理由
「もう少し詰めてもらえますか」
その一言が、誰の口からも出ませんでした。
私を含めて、多くの人が考えたはずです。
けれど、頭の中で過るのは、最悪の場合の絵。
逆ギレされたら、にらみつけられたら、絡まれたら。
声を上げる勇気よりも、面倒を避ける気持ちの方がほんの少し勝ってしまう。
それが、満員電車の中の不思議な力学なのかもしれません。
結局、若者は最後までスマホから顔を上げませんでした。
降りた駅で振り返ると、彼は次の駅に向かう電車の中でも同じ姿勢のまま。
悪意があるわけではなく、ただ周囲が見えていないだけ。
そして私たち乗客の側も、声を上げる勇気を持てなかった。
会社に着いてからも、ホームに残された人たちの諦めた表情が、しばらく頭から離れませんでした。
自分が二十代の頃ならどうしていただろう、と数十年前の通勤を思い返してみても、ぴたりと当てはまる答えは出てきません。
もし明日の朝、また同じ場面に出くわしたら。
そのとき自分は、「すみません」の一言を口にできるのか。
オフィスのコーヒーをいつものマグに注ぎながら、若者の背中と、ホームに残された数人の姿が、何度も頭の中を行き来していました。
答えのないモヤモヤだけが、誰の心にも置き去りにされていく朝でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














