「落ち葉がこっちまで飛んでくるの」と苦情を重ねる隣人。冬になり、私が初めて伝えたお互いさまの事実
あとから建った隣の家
夏の終わりの日曜日、私は脚立にのぼって庭の枝を切っていた。
境の塀にかからないよう、毎年この時期になると短く切りそろえている。
隣に家が建ったのは4年前だ。木はそのずっと前から、同じ場所に立っていた。
越してきた60代くらいの女性も、家を建てる前に何度か様子を見に来ていたはずだった。
その年の秋、風の強い日が続いたあと、女性が塀越しに声をかけてきた。
「落ち葉がこっちまで飛んでくるの。どうにかならない?」
「すみません。枝は夏に短くしているんですけど、風が強い日はどうしても…」
すると女性は、少し不満そうに言った。
「でも、短くしたって来るものは来るでしょう」
袋に入った落ち葉を持ってきた女性
それから十日ほどたったころ、玄関のチャイムが鳴った。出てみると、女性が落ち葉を入れた袋を提げて立っていた。
「これ、お宅の木の分。この前も言ったわよね」
「…すみません」
拾いに行きます、と言いかけてやめた。留守中の隣家の敷地へ勝手に入るわけにもいかない。私は袋を受け取り、頭を下げた。
その夜、娘から電話がかかってきたので、落ち葉のことを話した。
さらに、冬になると隣の屋根から雪が落ちてくることも話すと、娘は驚いた。
「え、それは何も言ってないの?」
「うん。今までずっとね」
隣の屋根はうちの側へ傾いていて、毎年冬になると、固まった雪が勝手口の前へどさりと落ちてくる。そのたびに夫と二人で、黙って雪をかき出してきた。
勝手口の前で初めて伝えたこと
初雪の翌朝、私が勝手口の前で雪をかいていると、塀の向こうから女性の声がした。
「雪の上にまで葉っぱがあるのね。これ、いつまで続くのかしら」
私はスコップを止めた。そして声を荒らげることなく、隣の屋根を指した。軒の先には、今にも滑り落ちそうな雪が厚く張り出していた。
「落ち葉のことはすみません。枝もこれから短く切ります。でも、冬になると、お宅の屋根の雪がこの勝手口に落ちてくるんです」
女性は黙って屋根を見上げた。
「今まで何も言わなかったのは、お互いさまだと思っていたからなんですよ」
女性は今度は私の足元に積もった雪の山を見た。少し間があってから、静かに口を開いた。
「…そうだったの。雪のことは知らなかったわ」
そのとき勝手口から夫が顔を出し、黙って足元の雪を見た。ちょうど回覧板を届けに来ていた裏の家のご主人も、こちらに気づいて軽くうなずいた。
「屋根のこと、うちでも相談してみるわ」
女性はそう言って、塀から離れていった。
その冬のうちに、隣の屋根には雪止めの金具がついた。それから勝手口の前に雪が落ちてくることはなくなった。
翌年の秋。風の強い日の午後、女性は塀越しに私へ会釈すると、自分の側へ落ちた葉を何も言わずにほうきで掃き集めていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














