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定年後に忍び寄る心の隙間と陰謀論。自尊心を保つための帰依が招く排外主義の危うさ
人生の大きな節目である還暦。長年勤め上げた仕事から離れ、肩書きや学歴といったこれまでの評価軸が意味をなさなくなったとき、人は何に心の拠り所を求めるのでしょうか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんは、現代社会にはお金や出世、偏差値といったものを神のように崇める4つの宗教が存在すると指摘します。しかし、それらが人生の後半戦で影響力を失った後、最後に残るのがナショナリズムという名の宗教であると警鐘を鳴らしています。
社会との接点が薄れ、将来への不安や孤独を感じやすくなる世代にとって、日本の歴史や文化を礼賛し、自尊心を保とうとする心理は自然な流れかもしれません。しかし、それが度を越すと、他国や他民族を排斥する極端な思想や、根拠のない陰謀論に傾倒してしまうリスクを孕んでいます。ネット上に溢れる刺激的な情報を鵜呑みにし、複雑な社会情勢を単純な物語として解釈してしまう。そんな現代の病理について、SNSでは激しい議論が交わされています。
佐藤さんの提言に対し、SNSやコメント欄では多様な意見が噴出しています。
『高齢者が右翼的言動に陥るのは、自分達の世代をもっと尊重して欲しいからですね。自らの存在価値を高めたい、認めて欲しいという欲求の現れ』
という、世代特有の承認欲求を分析する声がある一方で、佐藤さんの主張を一方的だと感じる層からは、
『高齢者でくくってネトウヨの話というより、何ら根拠のないネトウヨの威勢のよさに論点を絞ってもらいたい』
といった反発も寄せられています。また、昨今の国際情勢を鑑みて、
『グローバリズムの幻想が霧散した今の世界状況だとナショナリズムの高まりは当たり前であり、危機感を持たなければ呑気過ぎる』
と、現状を肯定的に捉える意見も見られました。
佐藤さんは、物事の相関関係と因果関係を混同することの危険性についても触れています。例えば、特定の出来事が重なったからといって、そこに必ずしも意図的な陰謀があるわけではありません。しかし、不安の中にいる人は、バラバラの事象を一つの物語として繋ぎ合わせることで、自分だけが真実を知っているという万能感を得てしまう傾向があります。
何かにすがりたい気持ちを否定せずとも、それが他者への攻撃性に変わっていないか、冷静に見つめ直す余裕こそが、真の意味での知的な後半生を支えるのではないでしょうか。














