tend Editorial Team

2026.05.22(Fri)

「もう少し下げられないのかね?」新居祝いの品を選んだ時の武勇伝を語る義父。悪気のなさが残す違和感とは

「もう少し下げられないのかね?」新居祝いの品を選んだ時の武勇伝を語る義父。悪気のなさが残す違和感とは

壁を見て申し出てくれた義父

新居に越してから数年。

家族で集まるたびに、リビングの白い壁が話題に上がっていた。

義父は定年退職後で時間にゆとりがあり、ある日その目がふと壁に止まった。

「絵とか壁掛け時計とか飾ったらどうだ。俺が選んできてやる」

夫はやんわり遠慮を示したが、義父はもう乗り気だった。

電車に乗ってわざわざ都心の百貨店まで足を運ぶつもりらしい。義父なりの孫や息子夫婦への愛情の表れだと、私もありがたく受け止めていた。

会計時の店員へのひと言

お盆に義実家を訪ねた時、義父は応接間に油絵と鳩時計を並べ、待ちかねたように土産話を始めた。

海外製の油絵と、年季の入った鳩時計。

趣味としては悪くないと思った。

けれど話の中身は、選んだ品物よりも値段交渉のくだりが大半だった。

会計時、駐車券の有無を確認した店員に、義父はこう返したのだという。

「特急で30分かかったんだけどねぇ」

車で来た客には駐車券があるのに、電車で来た自分には何もないのは不公平ではないか。

そういう意味の愚痴を、嬉しそうに繰り返した。店員が困った顔をしていたであろう光景が、聞いているこちらにありありと浮かんでくる。

悪気のなさが残す違和感

値下げ品の油絵に対しても、義父は「もう少し下げられないのかね?」と粘ったらしい。

語り口はあくまで武勇伝の調子だった。

「店員さんも大変だっただろうな」と、夫が苦笑混じりに相づちを打つ。

義父は「俺の言ったことは正論だ」とでも言いたげに、何度も頷いていた。

(嬉しそうに、当然のように、こんな話を孫の前で繰り返すんだ)

悪気がないからこそ、訂正もできない。注意すれば「せっかく持ってきてやったのに」と機嫌を損ねるのは目に見えている。

義父の中では、値切りも駐車券の苦情も、息子夫婦への手柄話の一部なのだろう。

新居に絵と時計を持ち帰る車中、夫がぽつりと呟いた。「もう、買い物は頼まないでおこう」。私も静かに頷いた。義父との関係を悪くしたいわけではない。

ただ、店員さんに頭を下げに行きたいような気持ちは、その日からしばらく胸の奥でくすぶり続けた。リビングに掛けた絵を眺めるたび、義父の語り口の声色が耳の奥でよみがえる。

心づかいは確かに嬉しかったはずなのに、素直に「ありがとう」とだけ言える日は、しばらく訪れそうになかった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.06(Tue)

「本社の調査員だ、閉店作業は後にしろ!」バイトを1時間離さない男性客が、閉店5分前に何も言えなくなった理由
tend Editorial Team

NEW 2026.10.06(Tue)

「えっ、別の駅ですか?」転勤先で6か月定期を買った私。初出勤の改札で扉が閉まった理由
tend Editorial Team

NEW 2026.10.06(Tue)

「財布から出せばいいでしょ?」娘一人の生活費を狙って借金を頼む母…姉妹の積立表を示され顔色が変わった
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.08.08(Sat)

「焼き魚を頼んだと思うんだけど」混雑するランチタイムに注文を間違えた私。だが、客の対応に救われた瞬間
tend Editorial Team

2025.11.23(Sun)

「自分のパートナーの悪口を楽しそうに話す人って下品だなと思う。」大沢あかねが夫の“無理”なところ暴露でまさかの夫婦論争勃...
tend Editorial Team

2026.07.26(Sun)

「シカトするお前が悪い、弁当を作れ」夫との何気ない喧嘩。だが、妻が弁当を作るのをやめた結果
tend Editorial Team