「あの方、結婚されてますよ」不倫している女性社員によかれと思って教えてあげた。後日、私に待っていた理不尽な仕打ち
親切のつもりで告げた一言
金曜の夜、繁華街の交差点で見てしまった光景が、頭から離れなかった。
直属の上司の手と、中途入社の独身女性社員の手。
ネオンの下を、ホテル街のほうへ消えていく後ろ姿。
彼女は中途で入ってきてまだ半年、職場の人間関係を把握しきれていないように見えた。
上司に奥さんと小学生の子どもがいることも、知らないのかもしれない。
知らないままなら、いつか彼女が一番つらい思いをする。
月曜日、休憩室の自販機の前で二人きりになった瞬間、紙コップのコーヒーを手に声を落とした。
「あの方、結婚されてますよ」
彼女の目が一瞬だけ揺れて、すぐに無表情に戻った。
短い礼の言葉だけが返ってきて、彼女はフロアへ戻っていく。
それで話は終わったはずだった。少なくとも、私はそう思っていた。
奥さんの絶叫で裏返った職場の空気
翌月の朝、私だけが標的になっていた。
送ったメールに返事が来ない。会議で資料を鼻で笑われる。
終電近くまで雑用を押しつけられる。同じフロアの他のメンバーは普通に扱われているのに、直属の上司が私を見るときの目つきだけが、明らかに変わっていた。
(あの子、上司に話したんだ)
悟ったのは、最初の理不尽な叱責を受けた日の夜だった。
それでも証拠はないし、人事に駆け込むには弱すぎる。同期に愚痴を吐いても「気にしすぎだよ」と笑われて終わりだった。
1ヶ月耐えて、机の引き出しに退職届を入れた朝のこと。
今日の昼休みに、人事に出してこよう。そう決めて、いつもより遅くパソコンを開いた。
受付の方角から、聞いたことのない女性の絶叫が響いた。
「不倫相手の女はどこにいるの!?」
上司の奥さんだった。
コートも脱がずにフロアに飛び込み、まっすぐ女性社員の机へ向かって腕を掴む。
引きずり出そうとする奥さんと、しがみつく彼女。
叫び声と物が落ちる音、駆けつけた男性社員たちの怒鳴り声が、フロア全体を一瞬で飲み込んだ。
私の指先から、退職届を握りしめていた力がふっと抜けた。
あれだけ堂々と振る舞っていた上司の顔が、初めて青ざめていく。
フロア中の視線が、声も出せずに固まる上司に集まった。これまで誰も口にできなかった噂が、今この瞬間に、全員の目の前に転がり出ていた。
翌週、二人とも会社を去った。私への理不尽な叱責も、メールの返事が来ない朝も、嘘のように消えた。同期が「あの上司、ずっと前から噂あったらしいね」と耳打ちしてきたのは、その週末のことだ。
私は引き出しの退職届を破り捨て、そのまま自分の席に戻った。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














