「あの人、昨日と今日で別人なんだよね」指示がコロコロ変わる上司→私が出した紙を見て状況が一変
気分で動く上司と、すり減る現場
以前勤めていた会社の直属の課長は、その日の機嫌で指示の中身が変わる人でした。
朝に「このやり方で進めて」と言われた手順を、午後には「なんでこうしたの」と否定される。同じ案件で前日と翌日に正反対の指示を受けることも珍しくありませんでした。
修正を重ねても、評価が返ってくることはほぼありません。間違いを直したのに、また別の角度から指摘される。やり直しの山だけが机の上に積み上がっていきました。
同じフロアの先輩や中堅の主任もみんな、課長が通り過ぎた瞬間に小さく息を吐いていました。会議が終わったあと、給湯室で誰かが小さく呟いたのを覚えています。
「あの人、昨日と今日で別人なんだよね」
気分の上下が組織の上下に重なっている。そんな職場の空気は、想像以上に体力を奪いました。
記録という、たった一枚の盾
私が動き方を変えたのは、3か月ほど続いていた重要案件の打ち合わせのときでした。
例によって細かい指示が入りました。手順、納期、優先順位、関係部署への連絡の段取り。今までならそのままノートに書き取って終わりにしていました。けれど、その日の私は違いました。
(後で「そんな指示はしていない」と言われる予感がする)
私は指示が一段落したところで、ノートに書いた要点を声に出して読み上げ、課長に確認しました。
「この内容で進める認識でよろしいでしょうか」
はい、と返ってきた一言。それを聞いた瞬間に、自席に戻り、同じ内容を箇条書きでメールにまとめて送信しました。「ご認識相違あればご連絡ください」の一文を添えて。返信は来ませんでした。沈黙は了承の意。それで十分です。
1週間後、進捗会議で案件が想定どおりに動いていないと話題になり、課長は私の側に視線をぶつけて言いました。
「そんな指示はしていない」
覚悟していた台詞でした。私はバッグから印刷した紙を1枚を取り出し、机の真ん中にそっと置きました。日時、本文、宛先。全部、揃っています。
課長は紙を見た瞬間、表情がふっと固まりました。何か言いかけて、止まる。もう一度、止まる。会議室の時間が止まったような数秒のあと、課長は紙にも私にも触れず、静かに次の議題へ話題を移しました。
その会議のあと、隣の席の先輩がそっと近づいてきて、「お疲れさま」と短く声をかけてくれました。たったそれだけの一言でしたが、半年分の疲れが少しほぐれた気がしました。
気分の上下に振り回されないために、私が選んだのは1枚の紙でした。証拠を残すことは攻撃ではなくて、自分を守る盾なんだと、その日初めて腑に落ちたのでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














