「俺も起きるから」産後の夜泣き担当を約束した男。だが、現実に待っていたのは「いい父親」を演じる夫だった
真夜中のキッチン
子の泣き声で飛び起きた私は、暗い廊下を歩きながら明かりをつける。
寝ぼけた手でミルクを計量し、湯を注ぎ、温度を確かめる。
おむつ用のゴミ袋を結び直し、汚れたガーゼを水に浸す。
一連の動作はもう体に染みついていて、頭が起きる前に手だけが先に動く。
(これで何度目だろう)
カウントするのも疲れた。
寝室からは、夫の規則正しいいびきがかすかに漏れている。
出産直後は気配で目を覚ましてくれた人が、いつのまにか地震が来ても起きないんじゃないかと思うくらい深く眠るようになっていた。
「俺も起きるから」
出産前にそう言ってくれた夫の声が、ふと耳の奥でよみがえる。
あの一言にどれだけ救われたか、本人は覚えているのだろうか。
私は哺乳瓶を抱えてリビングに戻り、子をあやしながら、また一時間後の授乳までの仮眠に備えた。
朝の光に立つ夫
夫がリビングに現れたのは九時半過ぎ。私は朝食の片付けを終え、洗濯機を回し終えたところだった。
子はようやく機嫌よく、ベビーマットの上で笑い始めていた。
「お、おはよう」
「かわいいねぇ」
「よく笑うようになったなあ」
夫は寝起きの顔のまま、子を抱き上げて頬ずりする。
私が一晩中走り回ってようやくたどり着かせた、その「機嫌のいい時間」だけを、夫はいつも丸ごと持っていく。
子のあやし方も、声のかけ方も、確かに丁寧だ。父親としては悪くない、とは思う。
けれど、その姿を見るたびに私の中で何かが少しずつ削れていく感覚があった。私が積み上げた労力は、夫の「かわいいねぇ」のひと声で見えなくされてしまう。
労力の総量を本人は数えたことがないから、自分が「いい父親」をしているつもりでいられるのだ。
届かない声
「一回くらい、起きてくれてもいいんじゃないかな」
勇気を出して言ってみたら、夫はあっさり「ごめんごめん、明日は起きるよ」と笑った。
けれど次の日も、その次の日も、夫の寝息は途切れなかった。
ある朝、こちらの目の前で平然と告げられた一言が、すべてを決定づけた。
「アラーム切って寝直したわ」
対策まで本人が打っていることに気づいてからは、もう何も言う気力が残らなかった。
(やっても、やらなくても、結局私が動くだけ)
そう思いながらキッチンに立つ深夜、ミルクの泡が静かに浮かぶのを見つめる。
あの一言に救われた頃の自分に、今、なんと声をかければいいのだろう。今日もまた、答えの出ないモヤモヤを抱えたまま、ひとりで朝を迎えにいく。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














