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2026.06.06(Sat)

「あんた、空気読みなさいよ」妊婦の前で空席に座った男。動かない男性と周りの乗客に感じた違和感

「あんた、空気読みなさいよ」妊婦の前で空席に座った男。動かない男性と周りの乗客に感じた違和感

優先席の前で立ち続けた女性

混んだ朝の電車に乗り込んだのは、いつもより少し早い時間だった。

車内はすでに人でいっぱいで、優先席のすぐ前に女性がひとり立っていた。

右手でときどきお腹のあたりをそっとさすっていた。それに気づいてからは、目を向けるたびに心のどこかが引っかかった。

周りの乗客は、みんな気づいていた。

そう思う。

でも、誰も声を掛けなかった。

私も動けなかった。自分からひと言かけるタイミングをずっと測っていた。

次の駅でドアが開き、優先席がひとつ空いた。

立ち上がった人とすれ違うようにして、少し後ろに立っていたスーツ姿の男性がすっと移動してきた。

荷物を持ったまま立っていた女性の前で、男性は何も言わずに腰を下ろした。ジャケットの裾を整えて、すぐにスマートフォンを取り出した。

(あんた、空気読みなさいよ)

女性はそのまま荷物を抱えて立ち続けた。

動けなかった車内の空気

誰かが何か言うかと思った。

でも、それぞれが視線を逸らして、それぞれの時間に戻っていった。

私も同じだった。ひと言かけようとして、かけられなかった。

スマートフォンを見るふりをしながら、ずっと気にしていた。タイミングを逃すたびに、どんどん声を出しにくくなっていった。

車内に残ったのは、どこへ向けたらいいのかわからないもやもやした空気だった。あのスーツ姿の男性は窓の外を静かに眺めていて、周囲と視線が合う様子もなかった。それが余計に、胸の中に何かを積もらせた。

(声を出せばよかった)

そう気づいたのは、ドアが閉まったあとだった。女性の姿はもう車内にはなかった。

胸に残った静けさ

あの後ろ姿がしばらく頭を離れなかった。

何が正解だったのかは、今もわからない。

でも、あの朝の車内にいた私たちは、みんな何かを飲み込んで、それぞれの一日を続けた。ひと言声に出せなかった自分を、職場に着いてもなかなか許せなかった。

次に同じ場面が来たとき、今度は動ける自分でいたい。そう思いながら、職場までの道を歩いた。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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