「聞いてる」と夫は言うけれど。機嫌がいい日だけ話しかけてきて私が話すと目線を動かさない夫婦の食卓
話しかけてくるのは自分の気分のとき
休日の昼食時、夫はスマートフォンを見ていた。
しばらくして、何かを思い出したように声をかけてきた。
「ねえ、この前テレビで言ってたやつ、知ってる?」
気乗りしないときでも相槌を打つのが習慣になっていて、そのまま20分ほど夫の話を聞いた。
こちらから質問したり感想を言ったりしながら、会話を続けた。ひとしきり話し終えた夫が満足そうに沈黙したタイミングで、私もさっきから気になっていた出来事を話し始めた。
返事がない。
夫の目はまたスマートフォンの画面に落ちていた。話しかけてきたときとは別人のように、静かになっている。
さっきまでの会話の熱量はどこに行ったのかと思いながら、少し間を置いて、もう一度声をかけてみた。
「聞いてる」という一言の重さ
「ねえ、聞いてる?」
夫は画面から視線を上げないまま答えた。
「聞いてる」
そのままで続きを話す気にはなれなくて、話題を途中で切り上げた。
夫は気づいていないようだった。
聞こえていなかったと言ってくれれば、話すタイミングを考えようと思えた。
でも「聞いてる」と返されると、関心がないことを丁寧に証明されているようで、言葉に詰まる。なぜ自分が話したいときだけ話しかけてきて、こちらの話のときは画面に戻るのか。
意識していないだけなのか、興味がないだけなのか。尋ねる言葉がうまく見つからないまま、モヤモヤだけが残った。
夫に悪意はないと思う。機嫌のいい日の夫は本当に朗らかで、話しかけてきたときの表情はいつも明るい。
こちらが相槌を打つとさらに楽しそうに続けてくる。ただそのぶん、自分の話が終わると潮が引くように静かになる。その落差が、言葉にしにくい後味を残す。
一度だけ、「話しかけてるとき、ちゃんと聞いてほしいんだけど」と伝えたことがある。
夫は「聞いてるよ」と答えた。責めているわけでも怒っているわけでもなかった。でも、それ以上の言葉がお互いに出なくて、会話はそこで終わった。
翌朝の朝食でまた夫が話しかけてきた。前の夜のことを引きずっているわけでも、怒っているわけでもない。ただ、今度は私も相槌の量を少し減らしてみた。
夫は気づかなかった。それでも夫の話は続いた。私は黙ったまま、コーヒーをゆっくり飲んだ。
夫婦の会話というものは、どちらかが話せばどちらかが聞くものだと思っていた。でも実際には、話すのはいつも夫の気分次第で、聞くのは決まってこちら側だ。
そのことに名前をつけられないまま、今日もリビングで向かい合っている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














