「分からないことがあったら、何でも聞いてね」引越し先にいた優しい隣人。だが、隣人の本性に思わずドン引き
見られている朝
戸建てに越してきて、まず声をかけてくれたのがお隣の女性だった。最初の親切は、本物のありがたさだった。
「分からないことがあったら、何でも聞いてね」
「心強いです。よろしくお願いします」
ところが日が経つにつれ、その距離は少しずつおかしくなっていった。玄関を出るたび、必ずどこかに彼女がいる。
「昨日、帰り遅かったね」
「あ、はい。仕事が立て込んでいて」
「今日は車、まだ出てないみたいだけど。お休み?」
こちらの一日が、すべて把握されている。
とくにゴミ出しの朝は、視線が背中に張りつくのを感じた。家を出る時刻が少しでも遅れると、必ず一言が飛んでくる。
「今朝は出すの遅かったわね。ギリギリだとみんなの迷惑になるのよ」
「すみません、気をつけます」
謝るたびに、彼女の口元がわずかに満足そうにゆるむ。親切なのか、見張りたいだけなのか、もう区別がつかなかった。
人前での一言
その日、集積所には何人もの住人がいた。袋を置こうとした私に、彼女の声が飛んだ。
「あなた、その出し方おかしいわよ。みんな見てるんだから」
居合わせた人たちが一斉にこちらを見る。
「分別は、ルール通りにしているつもりで……」
「だから、つもりが甘いのよ。新しい人は教えてあげないとね」
言い返せないまま、私は家に帰った。夫に相談しても、答えは頼りなかった。
「ご近所なんだから、波風立てないほうがいい」
引っ越したくても、買ったばかりの家だ。その夜、私は自治体の分別表を何度も読み返した。私の出し方に、誤りは一つもなかった。
「ルールを守ってるのは、こっちなのに」
声に出すと、悔しさより先に呆れが込み上げた。間違っていない以上、私が縮こまる理由などない。
黙り込んだ顔
悩んだ末、私は自治会長に相談した。
会長は最後まで話を聞き、こう言った。
「これは、あなた一人の問題じゃない。地域全体でルールを確認しましょう」
後日、回覧板にゴミ分別の一覧表が挟まれて回ってきた。
そこに書かれた内容は、私の出し方が正しいことをはっきり示していた。
その回覧板を届けに来たのは、ほかでもない彼女だった。一覧表に目を落としたまま、顔から表情が消えていく。
「……回覧、置いておくわね」
「わざわざありがとうございます」
それだけ言って、彼女は背を向けた。あれほど饒舌だった人が、もう何も言わない。
翌朝の集積所には、誰の声もなかった。私は堂々と袋を置き、まっすぐ家へ戻る。見張られる朝は、もう終わったのだと足取りで分かった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














