「全部金無駄になった!全部どぶや!」発熱した子を理由に家族旅行中止。だが、夫の最低な言葉に心が離れた瞬間
熱を出した下の子
下の子が熱を出したのは、家族旅行の3日前の夜だった。
体に触れると、服越しでも分かるほど熱い。私はすぐに夫に相談した。
「明日になっても下がらなかったら、キャンセルも考えないと」
「えー、もったいな。子どもの熱なんてすぐ下がるって」
「すぐって言っても、無理させて連れて行ったら可哀想でしょ」
「キャンセル料いくらかかると思ってんの。キャンセルとか一番損やん」
夫の口から最初に出てくるのは、いつも金額の話だった。
布団でぐったりしている我が子より、予約の料金。私はその時点で、嫌な予感がしていた。
前日まで下がらなかった熱
結局、熱は前日になっても下がらなかった。私は一晩中、冷たいタオルを取り替えながら子どもに付き添い、ほとんど眠れなかった。
隣の部屋からは、夫のいびきが規則正しく聞こえてくる。子どもの咳で目を覚ますたび、私はこの温度差に薄ら寒いものを感じていた。朝になって、私は腹をくくって伝えた。
「やっぱり今回は中止にしよう。この熱じゃ連れて行けない」
夫は数秒、無言だった。
そして、苦しそうに眠る子には一瞥もくれず、鬼の形相で叫んでいた。
「全部金無駄になった!全部どぶや!」
「絶対他の日に旅行とかせんからな」
子どもの体調を案じる言葉は、最後までひとつも出てこなかった。
あったのは、ただ自分の払った金が惜しいという苛立ちだけ。布団で苦しそうに眠る我が子の方を、夫は一度も振り返らなかった。
私はその横顔を、まるで知らない他人を見るような気持ちで眺めていた。
静かに離れていった心
不思議と、怒りは湧いてこなかった。代わりに広がったのは、すうっと冷えていくような感覚だった。
言い返したい気持ちもあったけれど、言葉を飲み込んだ。この人に何を訴えても響かない、ともう分かってしまったからだ。
子どもの熱は、その週末のうちにすっかり下がった。元気を取り戻した子を連れて、私は近所の公園へ向かった。ブランコをこぐ我が子の笑い声を聞きながら、ようやく肩の力が抜けていく。
「ママ、見て!こんなに高くこげる!」
「すごいね、上手になったね」
家に戻ると、テーブルに旅行のパンフレットが残っていた。色とりどりの観光地の写真が、今はやけに白々しく見える。
私は迷わず、それをまとめてゴミ箱へ放った。次の旅行先を選ぶ気も、もう起きなかった。
この人とは、もう一生どこへも行きたくない。声に出さずそう思った自分に、自分でも驚くほど動揺はなかった。心はとっくに、静かに離れた場所へ移っていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














