「うちの子の進路で迷っててね」と相談してきたはずの叔母。だが、自分勝手な主張に父が一喝した結果
動物看護師の私が誇る仕事
言葉を話せない動物と、心配でたまらない飼い主と、獣医師の間に立つ。
それが動物看護師である私の仕事です。
子どもの頃から動物が好きで選んだこの道を、私は誇りに思っています。
その自負が揺さぶられたのは、兄の結婚式でのことでした。
親戚が一堂に会した披露宴。
普段はめったに集まりに来ない叔母が、めずらしく私の席に近づいてきました。教育熱心で知られる人です。
「うちの子の進路で迷っててね」
医者か、獣医か。
動物病院に勤める私に意見を聞きたいようでした。
「楽でしょ」に凍りついた
叔母は私の答えを待たず、自分の結論を口にしました。
「獣医はやめて、お医者さんの方がいいわよね」
理由を尋ねると、返ってきたのは耳を疑う言葉でした。
「だって獣医って、相手は動物でしょ。ちょっとね…医者の方が立派でしょ」
獣医師がどれほど飼い主と向き合い、暴れる動物と格闘し、見えない責任を背負っているか。
それを何も知らないまま「楽」と言い切られて、私はとっさに声が出ませんでした。鳴き声でしか不調を訴えられない動物の異変を見抜くのも、不安で泣く飼い主さんを支えるのも、すべて私たちの仕事です。
動物が相手だから楽なのではなく、言葉が通じないからこそ難しいのに。
「叔母さん、それは……」
言いかけて、やめました。
お祝いの場で親戚と揉めたくはありません。私は膝の上で手を握りしめ、黙り込むことしかできませんでした。
点滴を嫌がる犬をなだめる時間も、手術を待つ飼い主さんに何度も声をかける時間も、すべて「楽」のひと言で消されたようでした。
反論したいのに、声がのどの奥でつかえます。
父が代わりに告げた
そのとき、隣で杯を傾けていた父が口を開きました。
「本人に決めさせろ」
「横から楽そうな方を勧めるもんじゃない」
叔母が、はっと父を見ました。
「医者も獣医も、どっちも大変な仕事だ。うちの娘の仕事を楽だなんて、よく言えたもんだな」
静かな口調でしたが、芯のある言葉でした。
叔母は反論しようと口を開きかけ、けれど周りの親戚の視線に気づくと、そのまま言葉を失います。
やがて小さな声で「……失礼しました」とだけ漏らし、逃げるように席を立っていきました。
残された私に、父はそっと笑いかけてくれました。
「お父さんは、お前の仕事を誇りに思ってるよ」
その言葉に、つかえていたものがほどけていきました。叔母とはそれきり疎遠になりましたが、不思議と寂しさはありません。
自分の仕事を胸を張って語れる、それで十分だと思えたからです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














